Kaikai Kikiギャラリー(広尾)のDrawings : 1988-2018 Last 30 years Yoshitomo Nara【2018年2月9日(金) – 2018年3月8日(木)】をみてきました。
Kaikai Kikiギャラリーは村上隆さん主催のギャラリーです。2016年の横浜美術館の展示「スーパーフラットコレクション」で紹介されたように、村上さんは芸術家、教育者、キュレーターであると同時にコレクターとしても有名で、世界中の美術品を古今東西、高い安いを問わずに収集しています。
同世代の芸術家の作品も多くコレクションしており、中でも奈良美智さんの作品は展覧会でも大きく扱われていました。村上さんの研究の中でも奈良さんは相当大きな地位を占めていることが分かります。
そんな奈良さんのドローイングが1988年から2018年まで30年分無料で一気に見れるという豪華な展覧会です。
周りにギャラリーもなく、いつもあまり人がいる印象のないカイカイキキギャラリーですが、今日は人でいっぱいでした。
奈良さんといえばにらみつけるような目力のある女の子がトレードマークですが、初期の作品には彼女は登場しません。
この頃は画風が安定せず、いろいろ模索してるのが分かります。どちらかといえば西洋の風刺の効いた絵を髣髴され、後への展開が予想させます。このころは路上で数千円でドローイングを売っていたそうです。
例の女の子が登場するのは1999年ごろ。それ以降は急速にモチーフの多様性は失われます。
キャラクターは定まりますが、表現の多様さは維持されます。そして奈良さんの作品を一気に見るとその共通点がある程度見えてきます。
ひとつは文字が書いてある作品が非常に多いことです。それもメッセージ性がありそうなものから、
単なる思い付きじゃないかと思われるのもあります。
もう一つはその辺りにあったと思われる封筒や段ボールなどに書かれた作品が多いことです。
これらのことからは奈良さん自身の自分史としての機能があるのではないかと感じました。その時周囲にあった封筒に自分の感情や関心事をそのまま絵と文にすることで、振り返って自らの生きた証を確かめることができます。
作品を見ていて発見したのは、怒ってる女の子の絵ばかりが有名ですがそれ以外の作品も結構あることです。
特に脱力系は好きです。
単一のキャラクターでここまで多様な世界が展開できることに驚く一方で、モチーフを固定してしまったことは彼がイラストレーターとして見られる現象を加速させてしまった感が拭えません。
現在、世界の現代アーティストベスト100に入る草間彌生、村上隆、奈良美智の3人のうち、奈良さんが一番マーケットから遠く、そのため活動も少なくなっているよう感じます。実際奈良さんは美術作品を先物取引としてしか理解しない風潮にうんざりしているようです。このまま「真のファン」のためだけに活動するのか、それとも新たな境地に立つのか、去来が注目されます。
★★現代美術が増量「MOMATコレクション」 – 博司のナンコレ美術体験2018年6月25日 11:57 PM /
[…] 加藤泉、奈良美智などはこのテーマに欠かせないとして・・・ […]