Gallery AaMo(東京都文京区)の櫛野展正のアウトサイド・ジャパン展【2019年4月12日(金)~5月19日(日)】を見てきました。
アウトサイダーアートとは、専門的な美術教育を受けていない表現者全般をいいます。
しかしその定義は厳粛なものではなく、本展でも写真教室などで勉強したアーティストや、プロの写真家もいます。
キュレーターの櫛野さんが面白いと思った作品が集まっている、というぐらいに思った方がいいかも知れません。
70名以上のアーティストの作品2000点以上を集めたと称しており、かなり濃い内容です。
特に面白かったものをピックアップしてみます。
通称「帽子おじさん」。飾りを大量に付けた帽子を被り、自転車で走り回るパフォーマンス(本人にとっては日常なのでしょうが)で有名です。
国内外のアール・ブリュット展でも有名人で、海外の美術館にも作品(というか帽子)が収蔵されているそうです。
帽子に既製品を貼り付けただけのものであり、技術的に高いものは特に見られません。
ところで彼は神奈川在住で、すでに引退されているとのことですが、僕の通勤ルート(新宿)で似たような人を見たことあるような・・・
もしかすると似たようなことをしてる人が全国に大量にいるのかもしれません。
絵画作品はたくさんあったのですが、「狂気」を強調したものが多く、面白いものは少なかったです。
その中でこの作品は巨大な用紙に独自の世界が無限に広がっていく、というイメージが好きです。
地球儀のようなイメージが多数登場し、内外に文字がびっしり書かれています。
繰り返しでありながら無限に展開していくところが面白いです。
食に関する作品もいくつかありました。
これは食堂店頭の食品サンプルをフェルトで作ったもの。
いわゆる「オカンアート」に近いものですが、ちゃんと美味しそうに見えるところがポイント高いです。
通常の食品サンプルの人気が高まり、一般販売も盛んになってしまった今、こういう変わり種は貴重です。
北九州市に本店を置く貸衣装店です。
普通の貸衣装店と違うのは成人式向けのド派手な特殊衣装が充実している点。
個人がお店をやっているのはありましたが、会社そのものが紹介されているのはこれだけでした。
指定暴力団の本拠地もある北九州はきわめてガラが悪いところですが、一方いわゆる田舎のヤンキー文化がいまだ盛んな地でもあります。
かつてテーマパーク「スペースワールド」で行われていた成人式にも派手ないでたちの若者が多く集まっていました。
こういう衣装があるのは驚きませんが、これで商売が成り立つのがすごいところ。
やっぱり北九州はハンパない。
会場の一角に設けられた18禁コーナー。エログロな作品が多数集まっていました。
ダダカンこと糸井貫二さんは1920年生まれ。
裸のパフォーマンスでプロのアート界においても有名人で、この展覧会では異色の存在です。
1970年の大阪万博での裸の全力疾走は太陽の塔に立てこもった「目玉男」とともに有名です。
その後もリスペクトする芸術家の個展で(敬意を表して)全裸になるなどのパフォーマンスを繰り広げ、プロの芸術家からも尊敬される存在でしたが、現在は引退。
でも自宅に行くとパフォーマンスを見せてくれるらしい・・・。
展覧会ではその自宅でのパフォーマンスと過去の作品(?)を展示。
プロのアーティストですが、どこも紹介できないという意味では究極のアウトサイダーといえます。
その他も18禁コーナーは猟奇的な作品や、エロ本研究家など濃い展示が多かったです。
通常のプロになるのをあきらめ、全て一人でアニメや特撮を制作している人です。
路線は特撮、美少女、コメディと揃っており、特撮の意匠は手作り。アニメはパラパラ漫画に近いです。主題歌も自分で歌ってます。
TYPE MOONのように同人作家が一足飛びにプロを凌駕することも多いので、こういうアマチュアは侮れないです。テイストはエヴァンゲリヲンの庵野秀明監督のアマ時代の作品に近いものを感じますが、強引に全部一人で制作していることによる無理がどうも笑いを誘ってしまうのがここで紹介されるゆえんでしょうか。
これも食に関する作品です。
その日食べたものを日記形式でひたすら記憶していってます。
食品のパッケージなどを貼り付けて保存しているのも特徴です。
「旨い」とコメントがたくさん入っている通り、食物への敬意が強く感じられる作品です。
また、チェーン店などファーストフードも多く紹介されており、大量生産だろうが、添加物だらけだろうが、旨いものは旨いというストレートなメッセージが心地よいです。
こちらも18禁コーナーにあった作品です。
プロの写真家さんなのですが、現在は熟女自撮り写真家として有名になってしまったようです。
作品のクオリティは高いのですが、笑いを重視し過ぎた結果、アウトサイダー認定されてしまった例です。
とはいえ夫とともに色々撮影旅行に行ってるみたいで、楽しそうだなとストレートに感じる作品に仕上がってます。
Twitterでブレイクした例です。SNS発達後、こういった作家さんはどんどん増えている気がします。
被り物による仮装は700点に及ぶといいますが、衣装の保管場所はなく、ほとんど破棄しています。
展覧会では衣装の一部と写真100点を展示しています。
やはり太陽の塔はインパクトがあります。
仮装のバリエーションは非常に豊富です。
時事ネタも多そうです。
2018年にお亡くなりになっている作家さんです。
栃木県の那須に「創作仮面館」なる自宅兼展示場を開き(ただし年中休館してたそうです)、大量の作品を生み出し続けていました。
家族もおらず、生年も不明の謎の人物です。
会場での作品展開が一種のインスタレーション作品になっていました。
廃材をリサイクルしたと思われる仮面は一点一点が個性的で見ごたえがありました。
入館料は結構高いのですが、ボリュームがすごい上、他では見れない作品ばかりなので見に行く価値は十分あります。★★★