東京アートミュージアム(仙川)のセルゲイ・チョーバン 建築ドローイング展「凍てついた音楽の夢」【2018年4月7日(土)~6月24日(日)】を見てきました。
ドイツ・ベルリンの建築ドローイング美術館創設者・セルゲイ・チョーバン氏のドローイング展です。
どれも建物を描いた作品ですが、実際に計画、建設された建物ではなくチョーバン氏の想像の中にのみ存在する建物です。
作品はロシアン・アヴァンギャルドの影響を深く感じます。ヒエロニムス・ボスの頭部や引き倒されたレーニン像の中に部屋を作るなど、直接引用が目立ちます。
想像の産物とはいえ採光の計画などが細かく書き加えられているのは興味深いです。また水没している建物も多く、これもかつての前衛建築へのノルタルジーを示すものかもしれません。
ところでこの美術館の設計は安藤忠雄氏です。この一帯は道路に沿った細い建物のほとんどが安藤氏の設計です。
しかも用途はオフィス、住宅、劇場、美術館とバラバラでさながら安藤ミュージアムと化しています。
中でも美術館は道路に面したスリットから中の展示の一部が見える、かなり珍しい設計です。
狭い入口から廊下を通って一気に3層吹き抜けの明るい空間に出るのは安藤氏お得意の手法であり、定番ではありますがやはり見ごたえはあります。
この住宅街のど真ん中に作られた特殊な空間で特殊な建築の展示を見るのはなかなかの異空間体験です。作品の面白さより、安藤建築との相性の良さの勝利です。★