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★★★ジャム・セッション 石橋財団コレクション×柴田敏雄×鈴木理策 写真と絵画−セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策

アーティゾン美術館ジャム・セッション 石橋財団コレクション×柴田敏雄×鈴木理策 写真と絵画−セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策【2022年4月29日[金] – 7月10日[日]】を見てきました。

 

美術館のコレクションと現代芸術家を組み合わせる試みですが、写真家と組み合わせるというのはこれまでになかったと思います。特に柴田敏雄氏については2008年の東京都写真美術館の個展以来大規模な展示もなく、マニアックなところをついてきたなと思います。にしても近代絵画がメインのアーティゾンと鈴木氏はともかく柴田氏が合うとは思えず、どのような展示になるのか気になるところです。

会場は要ってすぐのところには小さい写真が並んでいます。

上の方の写真はほとんど見えず、珍しい展示方法です。

が、一点一点を見てもよく分からないもののありました。ただの写真なのに抽象画のように見えるのが面白いです。

冒頭に展示されたメインビジュアルの写真は昆虫や植物の顕微鏡写真を彷彿させましたが、実際はダムの用水路を流れる水のようです。

にしてもこんな写真をメインビジュアルに据えるとはアーティゾンも予想の斜め上を行きます。

柴田敏雄「山梨県南アルプス市」

柴田さんの写真は山奥のインフラの写真がほとんどです。国土交通省の役人が卓上で考えたであろう環境保護派が激怒しそうな景観ですが、規則性と自然の地形が融合して不思議な景観を作り出しています。

柴田敏雄「茨城県日立市」

一方合理性を考えて作られたとは思えない不思議な景観も。

これなどは自然を制御しようとした結果、カオスを生み出してしまったものに見えます。

会場自体もこのガタガタが国土交通省のインフラに見えてきました。

鈴木さんのほうはこんなガタガタしてませんでしたし。

このガタガタ部分はアーティゾンのコレクションと柴田さんの写真を混ぜて展示しており、近代絵画が表現しようとしたことと柴田さんの作品に連続性が見えました。どちらも山奥で作られた作品には違いがない・・・

鈴木さんの作品は一見すると、柴田さんに比べるとストレートに自然の美を映したものに見えます。

しかし柴田さんやアーティゾンに引っ張られたのか、鈴木さんの作品もなんだか不穏に見えてきます。

上の写真などどうやって撮ったのかよく分かりません。

柴田敏雄「埼玉県飯能市」

柴田さんの方も謎めいた写真を撮っています。

ダムの風景のようですが水面や橋が映っているようであり、妙に平面に見えるのも不思議な感じです。

 

抽象的な写真も多いのですが、実際に抽象画と並べて展示するのは珍しく、写真家から見た過去のアーティストの話もあり、勉強になりました。★★★

 

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