東京都練馬区の「ちひろ美術館 東京」に行ってきました。
庇にさりげなく小さく館名が横文字で描かれています。
設計は内藤廣氏。しかし海の博物館などの屋根が特徴的な建築からすると、内藤らしさというのはこの建物からはあまり感じません。
この美術館はもともと絵本作家のいわさきちひろ氏の自邸を改造したものでした。
今回訪問したのはそれを建て替えたものです。
しかし自邸にあったケヤキの木や中庭を残したいという考えと、そもそも周囲が2階建て程度の一戸建ての住宅で大きな建物が建てられないことから、小さな建物の群棟になっています。
狭い土地に常設、特別展示室、ショップ、カフェ、図書室などを入れた結果、手狭な部屋が並ぶことになりました。
建物の仕上げは非常にシンプルなあずき色の鉄板を貼っただけ。しかも1階部分はコンクリート打ちっぱなしです。
そのためますます美術館らしくないです。
私設美術館の財政事情が分かるような仕上げです。
特に天井は美術館なのに、一般のマンションと同じか、それ以下の高さしかありません。
しかし狭い割には不快感がなく、むしろ心地よい空間になっています。
絵本の美術館というイメージに合わせてか、カフェの机や椅子も小さいものを揃え、また廊下にそれらを並べることで家庭的な雰囲気を演出しています。
こだわって残した中庭も活用されています。
中庭を美術館が囲んでいる形です。
庭はかなり丁寧に手入れされている様子。
ちひろさんが好きだった花に拘って植栽されています。
学芸員さんがやっているのかは不明ですが、こうなってくるとに和紙としての仕事の比重が相当なものになりそうです。
階段下の狭いスペースも活用されています。
子どもの隠れ家としての演出でしょうか?
展示室内も他の家庭的雰囲気を連続させています。
元の家の雰囲気を残しながら美術館としての機能を十分に果たすという課題に見事に応えています。
内藤氏の作品としては小品ですが、丁寧な仕事ぶりがみられます。★★