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★★建築図鑑⑳建物に支えられた現代仏教の世界観「築地本願寺」

東京都中央区の築地本願寺に行ってきました。

設計は伊東忠太。日本が西洋の建築を学ぼうと必死になっているとき(現代もですが)に一人東洋を旅して独自の歴史観、世界観で設計、研究を行った異端の建築家です。

建物も外観からして異様です。日本は飛鳥時代より寺は中国式でしたが、伊東は仏教の起源はインドだとして、インド式のデザインを取り込んでいます。

頂部のトゲトゲは遠くからでも存在感抜群です。

さらに建築は木造から石造に発展すべきという考えから本建築は鉄筋コンクリート造です。しかし、安易なモダニズム建築に走らず、花崗岩やモルタル仕上げで石造に見せかけています。

正面の意匠は蓮の花と菩提樹の葉を組み合わせています。

正面階段の両脇を固める阿形と吽形の獅子。でもかなりアヤシゲなオリジナルデザインで、建物とマッチしてます。

内部の階段も様々な動物の彫刻が置かれています。これらもアジア歴訪の成果ではありますが、幼少期から怪獣好きだったそうなので、これは生まれ持っての才能が旅行で開花した結果ですね。全体的に丸っこい愛嬌のある姿が特徴です。

奥の部屋は外観に比べて普通です。これは信者がインド式に反対したため内装は安土桃山式になった結果だそうです。ただここも暖房の吹き出し口に動物が隠れています。

伊東とは直接関係ないですが、境内に建つインフォメーションセンターはレストラン、展示コーナー、書店を備え、様々な形で地域貢献と仏教の普及に努めています。

築地本願寺は境内でライブを行うなど都内でも有数の前衛的なお寺です。伊東の独特の建築が伝統宗教のアクティブな活動を支えていると思われます。伊東は内装が自由にできなかったことでこの建物を気に入っていなかったようですが、外観は伊東の建築の中で最も個性的で、かつ現在も十全に活用されている傑作建築だといえます。ナンコレ度★★

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