• 日々観た展覧会や関連書籍の批評をしていきます。

★★★生きている東京展

ワタリウム美術館生きている東京展【2020年9月5日(土)→ 2021年1月31日(日)】を見てきました。

 

ワタリウム美術館は開館30周年を迎えます。

これを記念した振り返りの展覧会であり、今回はワタリウムを設計したマリオ・ボッタ自身のドローイングを展示するほか、彼を含めた過去に同美術館で扱ったアーティストのうち、東京という都市に注目したアーティストを再展示するという企画です。

会場には各階にボッタのドローイングが展示されていました。特に会場入り口にはチケットカウンター、エレベーター、入口ドアのドローイングが置かれています。

こちらが実物のドアです。

建築家の展覧会は数ありますが、実際の建物と見比べられる機会は貴重です。

特にワタリウムの場合、三角形の土地であることもあって玄関ドアを含めた正面のデザインが極めて重要でした。

また国内にある外国人建築家の作品は遠方であることもあり適当なデザインのものも多いのですが、本建築はボッタの初期の比較的大きな、しかも美術館建築であることもあり、彼自身10回以上も来日して面倒を見た本気の建築でした。

結果美術館としては比較的小規模ながら、極めて尖った建物に仕上がっていると思います。

これは完成時の記者会見でボッタが説明のために書いたものです。

左右対称の三角形になるように心掛けたこと。三角形の角から採光を取っていること。通りに対しての顔を意識したことが描かれています。

三角形になるために角に置かれた階段。

この階段は正面の顔を整えると同時に内部空間を劇的にする効果もあり一石二鳥だと思います。

2,3階間の吹き抜けのドローイングです。

この吹き抜けは展覧会でも何度も言及されており、かなりこだわりがあったようです。

理想通りに実現したわけではないでしょうが、この吹き抜けにより数々の名展覧会が演出されてきたことも確かです。

模型も展示されていました。

後ろから。完成模型ではなく途中のものなので採光の計画などが実際とは異なります。

実際の背面。

正面性の強い建築ですが、実際には裏からも結構見れるし、採光に関しては裏面もかなり気を使ったようです。

上から。

こちらから見ると三角形にかなりこだわっていることが分かります。

ちなみに館内に置かれている椅子は妙に建物にマッチしてると思いましたが、これもボッタデザインでした。

会場で流れていたボッタとナム・ジュン・パイクの対談映像です。

ナム・ジュン・パイク「時は三角形」

動画では三角形の建物が好きと語られていますが、実際に三角形の作品も置かれていました。

ブラウン管の映像でも三角形の建物が次々と登場します。

なぜかヨーゼフ・ボイスらしき人物も映っています。

 

島袋道浩「夜明けの鳥と」

ここからは過去の東京という都市と関わった作家さんについての展示です。

この作品は朝5時40分から開始されたイベントで、屋上から巨大バルーンを飛ばすというもの。

特に何か変わったことをしているわけではないのですが、楽しげな雰囲気が伝わってくる良作でした。

1999年の作品ということでちょっと懐かしい写真がいい感じです。

ジャン・ホワン「3006m³:65kg

こちらはうって変わって物々しい雰囲気の作品です。

タイトルはワタリウム美術館と芸術家の重さを表わしており、両者を道路を挟んで100本の輸血用ゴムチューブで結んでいます。

ゴムチューブがワタリウム美術館の2階正面の大窓を通して内部まで伸びています。

作家は終始全裸でパフォーマンスを行っており、まさに都市と対峙といった雰囲気です。

寺山修司「疫病流行記

寺山修司の活動時期はワタリウムとは重ならないのですが、東京という都市を舞台に劇をやった人なので親和性は高いです。

寺山修司「走れメロス

こちらは1972年のミュンヘンオリンピック会場で行われたもの。

タイムリーな作品が並んでいます。

オリンピック会場の未来的なデザインとのミスマッチが面白いです。

寺山修司「人力飛行機ソロモン

新宿、渋谷一体を使って行われた伝説的な劇です。

こちらも1970年当時の街の様子が面白いです。

当時から渋谷駅前はスクランブルだったのでしょうか?

寺山修司「ノック

杉並区一体で行われた寺山氏の伝説的劇です。

これはその中のイベント(?)の一つで、観客にコスプレをさせ、ミッションを与えるというものです。

特に怪しかったのがこの赤い靴にぴったりの少女を連れてくるというミッションを与えられた陸軍軍人です。

 

SIDE CORE「empty spring」

新しい作品もありました。

これはコロナ下で作られた作品で、ゴーストタウン化した街でカラーコーン、タバコの吸い殻、自転車、箒などが勝手に動き出すというポルターガイスト現象を作り出した作品です。

路面に書かれた「止まれ」の表示が動くものもあり、この状況を作品化したものにしては珍しく面白かったです。

 

ファブリス・イベール「サイバー東京ラリー」

クイズに答えて東京中に隠された「ポフ」と呼ばれる作品を探し、写メールを送ると新しいクイズが送られてくる、というイベントです。

写真はポフの一つである「四角いサッカーボール」です。

思い付きみたいなイベントですが、当時細心のガシェットであるカメラ付き形態を駆使し、100の質問に答えて25の作品を集める必要があります。

電話対応するスタッフも必要で、結構手間のかかる作品です。

ナウィン・ラワンチャイクン「マイペイラン東京」

ワタリウム美術館は小さな建物ですが、東京という世界一のメガシティを活用すれば可能性は無限大です。

今後の活躍にも期待したい展覧会でした。★★★

コメント一覧

世界のアーティスト250人の部屋 – 博司のナンコレ美術体験2022年10月23日 3:33 PM / 返信

[…] 日本でもワタリウム美術館で個展が行われたリナ・ボ・バルディの自邸です。 […]

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