東京ステーションギャラリー(丸の内)の「鉄道絵画発→ピカソ行コレクションのドア、ひらきます」【2017年12月16日(土)-2018年2月12日(月・祝)】を見てきました。
東京ステーションギャラリーは1988年以来、改装しながらも運営を続けてきた。歴史あるギャラリーです。復元されたドームの空間とレンガ建築をフル活用した珍しい展示室でもあります。もっともこの疑似西洋建築が本場の西洋諸国から見てどれだけの価値があるのか疑問ですが・・・
今回はギャラリー初の純粋なコレクション展です。まずは鉄道関連の作品から始まります。
ミニチュアのような写真を撮る本城直季さんや・・・
上野の東京都美術館でも大きく扱われた元田久治さんの廃墟など、現代を代表する作家たちが出迎えます。
しかしより面白いのは鉄道美術館ならではの作品です。漫画のようなコマ割りがされていますが、やってきた列車は異様に小さく、遠近感を無視したものでした。マグリットやデルヴォーに見れるように、列車というのは異郷へ我々を誘う役割をしばしば果たすようです。
また鉄道自体を舞台に使った作品としてハイレッドセンターのパフォーマンスを大きく紹介。高松次郎の紐のパフォーマンスは今日見ても冴えてますね。この人には生まれつき教祖の才能がある気がします。一方コンパクトオブジェを調べる中西夏之は、周りの人の怪訝そうな表情がいい味出してます。にしても電車の中って半世紀前でもあまり変わらないんですね。
今回の展覧会のメインビジュアルです。機関士が下の方に押しやられ、画面中心には機関車の装置群が並んでいます。金色のバックがメカの美しさを際立たせます。
Y字路シリーズの一点。鉄道部分は広島ですが、他の部分は世田谷、横浜、パリなどから集めてきた風景です。一見写実的に見えながら、その実あり得ない光景が不安感を掻き立てます。
遠藤さんは都市を描いた作品が多くありますが、これはその中でも駅がメインテーマです。線路の下の隙間にまた線路があるという子供じみた妄想が実際に絵になっているのは感動すら覚えます。子供と「子供のような大人」しかいない光景は一見不気味ですが、鉄道のテーマパークのようにも見え、空想が広がります。
描くことの喜びが伝わってくる作品です。解説看板や駅事務所内の掲示物の文字がすべてちゃんと書かれていることや、鉄道工事の描写から斎藤さんの(変な言葉ですが)地に足のついたマニアぶりが伺えます。
戦前に存在した「上野地下鉄ストア」を題材にしてます。
実際のストアはビル正面全体に巨大時計が張り付くというものでしたが、岡本さんの作品はビルがパチンコ台と化しており、さらにパワーアップしてます。
鉄道絵画は全体の三分の一程度で、これ以降の作品は鉄道とはほぼ無関係です。
今回の展示で一番印象的でした。シナプスとは神経細胞のことなので、電気信号の伝達を視覚化した作品だと考えられます。
しかし実物は巨大なワニの顔にも見えるし、道路のようも、星雲のようにも見えます。さらに木の幹や人の体内のようにも見え、いかようにも捉えられる面白い作品です。
これを見て一気に元永さんが好きになってしまいました。独特の温かみのある有機物とも無機物とも判別がつかない生き物(?)たちは、まさに「具体」の吉原治良さんが言っていた「人のまねをしない」オリジナル性を強く感じます。
加納さんも謎めいた版画作品が多いですが、これはその中でもまだ分かる方です。
生乾きの絵具の上にフィルムを当てて作るという襞状の岩肌(?)の手前には羽の生えたイチゴ。美しい幻想的風景です。
全体として非常に見ごたえがあり、最後のピカソはむしろ蛇足に感じます(そうしないと人が集まらないのでしょうが・・・)今後もコレクションの充実と、現代美術の企画展が期待できそうな展示でした。ナンコレ度★★
★「いまーかつて 複数のパースペクティブ」 – 博司のナンコレ美術体験2020年1月6日 4:15 PM /
[…] もっとも興味深かったのは岡本信治郎さんの一連の作品でした。 […]