隈研吾さんと清野由美さんの対談本「新・都市論TOKYO」を読みました。
隈研吾さんの本は非常にシリカルな語り口で有名です。本書でも以下のようなやり取りが度々出てきます。
隈「いいんじゃないですかね」
清田「あ、隈さん関心ないんですね」
自分以外の建築家は例え3大巨匠のコルビジェやミースであろうが、先輩の黒川紀章や安藤忠雄であろうが、コキおろしまくります。その一方で経済論や社会論から日本の建築を語る点も、他の建築家本にない視点です。
代表作である「反オブジェクト」や「負ける建築」は目立つことや突出することを避け、施工費の安さや、身近な材料にこだわった自作が多く紹介されています。
新著「なぜぼくが新国立競技場をつくるのか」では、丹下健三→安藤忠雄→ザハ・ハディドというコンクリート建築の巨匠の流れを打ち破って、「その地域で手に入る安い材料を使う」自分が新国立競技場の設計者に選ばれたと語っています。
さて、今回の紹介する本で取り上げるのは汐留、丸の内、六本木ヒルズ、代官山、町田の5つです。代官山以外は肯定的に捉えられることの極めて少ない地域です。ではどの辺りが高く評価されるかというと東京の西側のJR中央線、または東急線など私鉄沿線沿い、逆に東側の浅草など下町です。
ではなにが都心の魅力的な町づくりを邪魔しているのか?本書の分析を総合するとそれは①リスク回避型で②短期利益回収型の街づくりに終始しているせいです。順に見ていきたいと思います。
➀リスク回避型とは都市計画にあたって一人のマスター・アーキテクトに任せるのを避け、各棟バラバラの建築家に依頼したり、内装と外装を別の建築家に依頼したりすることです。そのデザインも誰も傷つけない虚構に満ちたテーマパーク的デザインになります。
本書ではジョン・ジャーディ的デザインを「テーマパークからあふれ出してきたデザイン」としていますが。しかし僕はむしろジャーディのアーケードデザインは大都市圏で実現したものとしては最高レベルのものだと思います。どこもなんだかんだ言いながら存続はしていますし。
②短期利益回収型とは長期的ビジョンに立たず、竣工後数年で利益を回収することのみを考えて再開発をすることです。当然デザインは①と同様即物的なものが採用されます。
さらに法律もこの構造に力を貸しています。丸の内の旧ビル群の保存も、真の目的はその背後に建つ超高層ビルの容積率ボーナスにあります。
そういったことを考えると森稔の個人的なアイデアがそのまままちづくりになった「六本木ヒルズ」が如何に異質か分かります。都市計画は建築本と比べても難しいのが多いですが、本書は入門書に最適です。