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★平清盛はスケベオヤジ?「江戸の悪 PARTⅡ」

太田記念美術館(原宿)の「江戸の悪 PARTⅡ」【2018年6月2日(土)~7月29日(日)】を見てきました。

ヴァニラ画廊など複数の美術館、ギャラリーなどで「悪」について展示するという企画、その中核を担うのがこの浮世絵美術館の名門、太田記念美術館です。
歌川芳艶「破奇術頼光袴垂為搦」

当館では江戸期に描かれた浮世絵から様々な「悪」を展示しています。もっとも一口に「悪」といっても単に化け物が描かれているだけだったり、かなり範囲は広いです。

 

三代歌川豊国「見立三光之内 日 平清盛」

江戸時代のヤクザ、国定忠治なども登場しますが、これらは江戸期の芝居のみで有名な人物で一般に知られていません。それより蘇我入鹿、平清盛、高 師直、明智光秀、織田信長といった史実の人物が多く登場していたのが面白いです。

上の絵は平清盛が太陽を呼び寄せるという絵画で、悪とはあまり関係ないです。

​歌川国芳「清盛入道布引滝遊覧悪源太義平霊討難波次郎」
これは清盛と源義平の対決(?)を描いたもの。雷の表現が独特で、江戸期の浮世絵文化の豊穣さを思わせます。

周延「彫画共進会之内 盛衰記西八條別館之図

かと思えばこちらは女性に言い寄る清盛像。構成に伝わったエピソードが拡大解釈され、単なるスケベオヤジとして扱われています。

清盛と言えば先年大河ドラマになるまでは日本史上ではちょっとした有名人のようです。

葛飾北斎: 「仮名手本忠臣蔵 初段」

さらに足利尊氏の家来、高師直になると、もっぱらスケベオヤジとしてしかもはや描かれていません。平和な江戸期には、歴史上人物を描いても内容は単なる風俗滑稽ものが多かったのかもしれません。

月岡芳年「英名二十八衆句 因果小僧六之助」 

​絵師別に見ると、面白かったのが月岡芳年です。肉体表現が独特ですが、やはり血糊の量が違います。

月岡芳年「英名二十八衆句:直助権兵衛」

殺して皮をはぐなど、かなり思い切った描写もされています。

 

悪についての色んな表現が見れ、同時に色んな絵師についても勉強できるので、なかなかお得な展覧会だと思います。★

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