映画「人生フルーツ」を見てきました。
主人公の津端修一氏は建築家。作中ではあまり語られませんが、丹下健三、アントニン・レーモンド、坂倉順三のもとで学び、住宅公団のエースとして活躍した、相当なエリートです。
しかし愛知県での津波被害を受けて高台でのニュータウン造営を試みた高蔵寺ニュータウンの設計以降、従来の仕事のやり方では理想の暮らしが手に入らないと考えるようになります。
そこで同地の一角に土地を購入。徐々に設計の仕事から遠ざかり、「自由時間評論家」と名乗り、自ら理想の生活を実践するようになります。
黒川紀章や大高正人など、他の多くの建築家も理想のニュータウン建設を夢見て、挫折を味わいました。ただ彼らがそれを次の教訓に生かして先に進んだのに対して、そこにとどまって等身大の暮らしを追求したのが津端さんの違いです。
作中では高蔵寺ニュータウンの意図や、台湾への出張など建築の仕事についても語られますが、あくまでメインは夫妻の暮らしについて。基本ワンルームの自宅の映像や・・・
100種以上の作物の収穫の様子・・・
英子夫人の作る美味しそうな料理の数々が次々に登場します。
人生論としては夫妻の独特の距離感に注目。英子夫人は修一氏を非常に立てていますが、例えば朝食は修一氏は米、英子氏はパンなど、完全に同調してないところもあります。この辺りが夫婦円満の秘訣かも。
一方子どもたちにも極力手製のものを与え、今でも大量の作物を贈り続けるなど、現代社会においては少々原理主義で非現実的に感じる部分も結構あります。これだけやるには相当能力も資金も必要でしょうから・・・
スローライフ映画というより、「美味しそうなご飯映画」と見る方が吉な気がします。★