• 日々観た展覧会や関連書籍の批評をしていきます。

日常と非日常★★「川内倫子 M/E 球体の上」

川内倫子「無題」

東京オペラシティアートギャラリー川内倫子 M/E 球体の上【 2022年10月8日[土]─ 12月18日[日]】を見てきました。

M/Eは母なる大地 Mother Earthの頭文字らしいです。

Me=私でもあるのでダブルネーミングですね。

オペラシティアートギャラリーは広くて天井の高い2つの展示室をあまり仕切らずに使う展覧会が多い中、今回は部屋を細かく仕切ってシリーズごとに見せる逆にオーソドックスな展覧会になっていました。

川内さんの展覧会は2016年に熊本市現代美術館で見たことがあるのですが、それ以降も作品が増えて見せるものが増えたということでしょうか。

回廊上にしたり極端な部屋割りが面白い空間でした。

 

川内倫子「helo」

また低い位置や高い位置・・・

川内倫子「A whisper」

床面などに映像を投影するなど、写真集で済まされてしまわれない工夫も見られました。

床面の映像は自宅の裏の川のもので、生活の制約の中でも身近なテーマを追求する彼女らしい取り組みです。

川内倫子「Illuminance」

映像作品は結構じっくり見ました。

展覧会における映像作品を見てもらえる時間は数秒と言われていますが、彼女の映像作品は結構魅入っている人が多くて、力量を感じさせました。

これは彼女が撮りためた映像をランダムに流すもので、展覧会の度に映像が増えるようです。

2つのモニターに映る映像の組み合わせもランダムで、これは彼女の写真集を彷彿させます。

川内さんの写真集(展覧会も)は脈絡の読めない写真の組み合わせの妙が醍醐味であり、彼女の写真集づくりを疑似体験しているかのようです。

 

川内倫子「4%」

もちろん写真集的な独特な展示空間づくりも健在です。

これはロサンゼルスのアーティストレジデンスで作成されたシリーズとのことですが、場所を感じさせない(そしてときに何が映っているのかすら分からない)不思議な展示になっていました。

川内倫子「無題」

抽象画のような写真が多かったです。

 

川内倫子「M/E」

後半は特殊な空間構成になっていました。

川内倫子「無題」

什器の底から光を当てて鑑賞する作品。ミュージアムショップでも販売されていました。

川内倫子「あめつち」

熊本の野焼きをテーマにしたシリーズなど非日常的なものや・・・

川内倫子「An intelinking」

シュールな写真もあるのですが・・・

川内倫子「無題」

やはり日常的な写真の方が好き、と感じるのは不思議なところです。

もっとも非日常的な作品があるからこそ普通の写真が生きるのかもしれませんが・・・

 

川内倫子「やまなみ」

今回の作品で最も良かったのが、滋賀県の障害者多機能型事業所を撮影したものでした。

映像展示もありましたがこちらも魅せるもので、同施設にはアール・ブリュットの著名作家も多数いるのですがむしろ施設の日常を淡々と記録しているかのような作品作りに感銘を受けました。★★

 

 

コメントを残す