「成田空港 空と大地の歴史館」(千葉県)に行ってきました。
航空科学博物館の奥にある施設です。
航空博物館はあくまで飛行機や空港の観光地としての側面を担う施設ですが、こちらは博物館では全く触れられない基地反対運動について学習できる施設です。
順路は八角形の建物を一周するだけの単純なもの。航空博物館に比べると施設は遥かに小規模で訪ねる人も稀ですが、展示内容は濃密です。
展示は空港以前の成田の歴史から始まります。成田は戦後開拓された村であり、極貧生活から必死に開墾したところに空港建設のための立ち退き話が出てきたことが説明されています。
地元民は当初から武力闘争に突入したわけではなく、初期は話し合いもされていたようです。
しかし政府の強制的な土地収用に至って地元の反対派は社会党や学生と結託。写真は一坪運動の木杭です。
闘争は過激化し、警察、反対派両者とも死者を出す事態に発展します。
当時の世相を表す資料も展示されています。ベトナム戦争や・・・
毛沢東の文化大革命など当時の流行が成田にも持ち込まれていました。
激しい反対運動に遭いつつも空港は徐々に形になっていきます。
三里塚闘争を題材に多数の映画を製作した小川プロダクションのコーナーもあります。
激しい反対の中、成田は開港します。
開港後も反基地闘争は続きます。しかし流石に乗客を巻き込んだ危険な活動は世間の支持を受けられなかったよう。
展示の最後の方では反対派、政府側双方の歩み寄りを求めるメッセージも。
反対派のヘルメットや武器類が展示されているので誤解されがちですが、決して反対派の立場に立ってはおらず、「なぜ死者が出るような激しい反対運動になったのか?」を解明するための展示となっています。
現在も係争中の問題を扱う博物館はそうそうなく、極めて意欲的な展示に感じました。★★