練馬区立美術館のサヴィニャック パリにかけたポスターの魔法【2018年2月22日(木)~4月15日(日)】を見てきました。
いつもながら、美術館の入り口付近には色々飾り付けがされています。
レイモン・サヴィニャックはフランスを代表するポスター画家。シンプルなデザインは日本でも人気で、今回は国内5か所の巡回展の皮切りとして練馬区立美術館で開催されています。
サヴィニャックははじめアドルフ・ムーロン・カッサンドルの弟子としてキャリアを形成します。当初はカッサンドルに心酔していたサヴィニャックですが、徐々に当時非常にシンプルと考えられていた彼のデザインすら冗長と感じるようになり、独立します。
独立後、彼の出世作となったのが、牛乳石鹸の広告です。実際この作品には彼のデザインのエッセンスが詰まっています。広告のキャッチフレーズに対応した商品と人物(この場合は動物)の一体化、深い単色の背景、子供の落書きのような太い線、大胆な描写の省略などです。
今回の展覧会の特徴のひとつとして、実際にポスターが貼られている所の写真を見せているとことです。機能一点張りのシンプルな地下鉄構内に貼られたサヴィニャックのポスターは強烈な印象を残します。
色々なモチーフを描いているザヴィニャックですが、個人的には動物ものに優品が多いように感じました。この作品はうって変わって赤い背景がスープの温かさを強調するようです。力強い製品のロゴもよく絵の雰囲気にあっています。動物の中でもニワトリはよく作品に登場するようです。
ちなみにこのポスター、非常に巨大で高さは3m近くありました。写真からも他のポスターに比べて巨大さがよく分かり、サヴィニャックがパリで強く支持されていたことを伺わせます。
これも商品と素材の合体型。製品が写実的に、動物は省略して描かれるのでびっくり箱めいた印象を与えます。
犬が左上に製品とキャッチコピーを持ち上げるという効果的な構図が楽しい作品です。リッチさを強調するため過剰に着飾るダックスフンドが面白い。
銅長の犬はポスターに取り込みやすかったようです。自分の尻穴を発見した犬が、同じ大きさの目玉を飛び出して驚いています。
その使用方法。日本ではあまりないですが、西洋圏ではポスターを貼るに最適な円柱は街中にあるそうです。
もちろん動物以外の作品もたくさんあります。こちらは半額にインパクトを与えるため、文字通り身を削っています。
製品などを指さす人物も定番のパターンです。本作はそれに加えて壁掛けを強調するため人物が壁になっています。
これは鎮痛剤の広告で、「頭痛の種」として「交通渋滞」を思い浮かべています。巴里の作家だけに車関係の作品も多く出てました。
国内ではスタイリッシュ文具として認知されているビックですが、イメージキャラクターのデザインはサヴィニャックでした。かなり大規模なキャンペーンだったようで、ポスターも多数制作されてます。
サヴィニャック本人はインタヴューに応えて生涯政治的広告を描いたことはないとしていましたが、実際にはごく少数社会的関心を示すポスターも制作しています。ただ彼のいつもの作品と違い色彩が暗く表情もどこか不自然なので、やはりあまり得意なジャンルではなかったようです。
ポスター展ですが、点数だけでなくポスター自体も巨大なものが多く、また解説も多くて会場も良く作り込まれており、非常に力の入ったものでした。★★★
練馬区独立70周年記念展
サヴィニャック パリにかけたポスターの魔法
会 期 2018年2月22日(木)~4月15日(日)
休館日 月曜日
開館時間 午前10時~午後6時 *入館は午後5時30分まで
観覧料 一般800円、高校、大学生および65~74歳600円
中学生以下および75歳以上無料、
障害者(一般)400円、障害者(高校、大学生)300円
団体(一般)600円、団体(高校、大学生)500円