埼玉県越谷市の埼玉県立大学に行ってきました。
設計は山本理顕氏。
山本氏は本校と公立はこだて大学をプログラムと呼ぶ手法で設計しました。
これは一定のパターン、ルールに基づいてデザイン、設計を進めるという手法で、どれだけ広げてもデザインが破綻せず、大きなものも効率的に作れるというメリットがあります。
一方パターンを上手く決定しないと単調に見えたり冷たく見えたりするため、誰でもこのような手法がとれるわけではありません。
黒川紀章氏(クアラルンプール国際空港)、ノーマン・フォスター氏(北京国際空港)、レンゾ・ピアノ氏(関西国際空港)、原広司氏(梅田スカイビル)などは皆このプラグラム建築の名手です。
埼玉県立大学は大学としてはそれほど大きくないですが、非常に合理的に設計されているのが分かります。
古い大学は増築を重ねて新旧の建物のバランスが破綻していますが、プログラム建築にはそのような心配はいりません。
基本的な構成は巨大な大屋根をのせた2つの棟と、その間の1階建ての教室、それと体育館で構成されます。
大阪万博のお祭り広場のようなトラスの大屋根の下には長い空中ブリッジがそれぞれ付きます。
手前の北棟の空中ブリッジから南棟方向を見たところ。
南棟の背後にはこれまた巨大な体育館があります。
各棟は2階レベルで接続されています。
大屋根の他に外観を特徴づける、南北の棟の間の芝生。芝生は斜面を登って2階レベルに広がります。
ちなみに斜面の真下は図書館です。
芝以外にも様々な植物が植えられています。
所々顔を出す半透明のブロックは室外機など、1階教室の機械室。
底面が斜めになっているブロックは大講義室。
大講義室は南北の棟に含まれているものと、棟から芝生に飛び出しているものとで合計4つあり、いずれも空中に持ち上げられています。
北棟内部。メカニカルながらもシンプルな設計。カーテンウォールは南北でデザインが異なります。
北棟下から見上げたところ。
屋根の構造がよく見えるのは横須賀美術館と同様です。
部屋番号が大きく描かれていて分かりやすいです。
直線を多用し、色調を抑えたデザインは同じ大型建築でも原広司氏と大きく異なります。
北棟の裏側です。やや単調な工場のような外観です。
北棟、南棟の奥にあるのが体育館棟です。
目的は違いますが、スケール感を揃えて設計されています。
ベンチなどの設備も建物に合わせて、オリジナリティを持たせながらもシンプルなデザインです。
非常にすっきりとしたスレンダーなベンチ。
北棟内部の休憩スペース。非常に合理的なデザインです。
一階の野外部にあるル・コルビジェのモジュール風の案内板。全部で9体います。
棟番号と部屋番号が融合したサイン。シンプルなデザインだけに馴れるまでは迷いそうです。
合理的でありながら冷たさを感じないデザインが気持ちのいい大学でした。★★