神奈川県立近代文学館の「寺山修司展 ひとりぼっちのあなたに」【2018年(平成30)9月29日(土)~11月25日(日)】を見てきました。
場所は横浜市のみなとみらい線の終点駅「横浜中華街駅」からさらに西に行った「港の見える丘公園」の西端にあります。
「横浜ベイブリッジ」「ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル」といった横浜のスカイラインを彩る建物を含む港が一望できます。
建築好きとしてはアレハンドロ・ザエラ・ポロ,ファッシド・ムサヴィ設計の「大さん橋」がよく見えるのも嬉しいです。複雑な断面構造がよく分かります。
寺山修司は演劇実験室「天井桟敷」主宰であり、劇作家として有名です。
しかしその活動は俳句、詩、小説、映画、テレビドラマ、果ては競馬やボクシングの評論まで広範に及びます。
とはいえ文学館で寺山修司???と少々違和感が拭えませんでした。
入口の自動ドアは原稿用紙型。文字がはみ出てたりと再現率は高いです。
展示の構成は文学館らしく、寺山さんの言葉に着目しつつも、彼の活動全体をフォローする包括的なもの。
彼は故郷の青森県三沢市から俳人としてキャリアをスタートしました。なので展示も時系列を織り交ぜながらも俳句や詩から始まります。
劇作家としての紹介は展示の後半部分だけで、展示の過半がそれ以外の活動に充てられていたのは特徴的でした。
特にテレビドラマの脚本をやっていたことは知りませんでした。内容も失恋の末飛び降り自殺をきっかけに空を歩けるようになった男の悲喜劇を描く「中村一郎」や・・・
人をネズミに変えることのできる超能力者が暗躍する「Q」などSFかつ人間心理に深く根差した作品が多いのが面白かったです。かと思うとドラマ「楠木正成」「足利尊氏」を担当してたり、初期からマルチぶりが伺えます。
また、エッセイというか雑本の紹介が予想外に充実していました。
現代人の幸福の在り方の劣化を感じて書いた「幸福論」や・・・
実際に彼の元に家出少年少女が押し寄せたという「家出のすすめ」など。
この現象は彼が若者の救世主としていかに心を捉えていたかを物語っています。
他にも「さかさま」シリーズなど、若者の苦しみに寄り添う著作が多かったようです。
このような共感は後述のアングラ演劇において彼が飛び抜けた存在になった、その理由ともいえる根本的な考えに感じます。
また彼の興味の幅広さを示す著作も。全国の呪術の習慣を集めた「花嫁化鳥」や・・・
世界中の書店で見つけた奇書をきっかけに不思議な世界を旅する「不思議図書館」「幻想図書館」などです。
他に「白夜討論」は彼が劇団員とろうそくが燃え尽きるまでという条件の下で語り合うというもの。テーマも哲学的なものから俗人的なものまでさまざまです。著作にも実験要素が含まれています。
詩作は後に歌謡曲の作詞にもつながっています。有名なところではあしたのジョーでしょうか。確かに改めて歌詞を思い浮かべると寺山さんっぽい世界観を感じます。ドキュメンタリー映画のタイトルにもなってます。
展示の後半の中心は劇団「天井桟敷」についてです。会場で流されていた「天井桟敷ヴィデオ・アンソロジー」によると「天井桟敷」は他の劇団にはある劇最後の舞台挨拶がないそうです。これは寺山さんが現実と劇との垣根を取っ払おうとしていたことに関わってくると思います。
「寺山修司展 ひとりぼっちのあなたに」
【会期】
2018年(平成30)9月29日(土)~11月25日(日)
休館日は月曜日(10月8日は開館)
【開館時間】
午前9時30分~午後5時(入館は4時30分まで)
【会場】
神奈川近代文学館第2、3展示室
【観覧料】
一般600円(400円)、65歳以上・20歳未満及び学生300円(200円)、高校生100円、中学生以下無料
*( )内は20名以上の団体料金
※身体障害者手帳、愛の手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方は無料
★時間を思う「CITIZEN“We Celebrate Time”100周年展」 – 博司のナンコレ美術体験2018年12月15日 8:47 PM /
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