• 日々観た展覧会や関連書籍の批評をしていきます。

★探求に果てはない「ヨルク・シュマイサー終わりなき旅」

町田市立国際版画美術館ヨルク・シュマイサー終わりなき旅【2018年9月15日(土)~11月18日(日)】を見てきました。

田市立国際版画美術館は芹ヶ谷公園の中にあります。美術館の裏手には飯田義国氏の巨大噴水彫刻もあります。

飯田善国「虹と水の広場」

 

さて、ヨルク・シュマイサーはドイツ出身で、主にオーストラリアで活動した芸術家です。世界中を旅した芸術家、といっても今日日珍しくないですし、版画というジャンルもインスタレーションや大型絵画に比べて地味・・・町田まで見に行く価値があるのか?とも思いますが、なかなか特殊な活動をしている人でした。

その作風は①旅②変化③考古学と3つの特徴があると感じました。以下一つ一つ見ていきたいと思います。

 

①旅

ヨルク・シュマイサー「京都東寺」

そうはいっても旅が最大の特徴です。時空を超えて色んな事物が並列して描かれているのが特徴です。

ヨルク・シュマイサー「法隆寺」

左下の人々も色んな時代の人が混じり合っているようです。

彼の故郷から遥かに遠い京都ですが、冷静に写実的に表現されています。

ヨルク・シュマイサー「ニューヨーク」

メインで活動した場所だけでなく、それ以外の訪問地も多く作品化されています。

両サイドの文字は日記の一部らしく、この表現は繰り返し使われています。

 

②変化

ヨルク・シュマイサー「死海」

アンディ・ウォーホルは一つの型に色を変えたパターンを大量生産しましたが、シュマイサーはさらに劇的です。この変化も彼の初期の作品から見られる特徴です。

 

ヨルク・シュマイサー「清水寺 春」

ヨルク・シュマイサー「清水寺 夏」

ヨルク・シュマイサー「清水寺 秋」

ヨルク・シュマイサー「清水寺 冬」

変化シリーズで最も印象的だったのがこのシリーズです。

清水寺といえば断崖絶壁ですが、彼はこの寺の自然の豊かさに注目。色を抑えた最低限の変化で四季を表現しようと試みています。「見えないものを描く」芸術家の好例です。

 

ヨルク・シュマイサー「変化Ⅱ」

これも過激なシリーズです。

ヨルク・シュマイサー「変化Ⅱ 波」

始めは服の模様を変えるぐらいでしたが・・・

ヨルク・シュマイサー「変化Ⅱ 振り返る」

ポーズを変えて見たり・・・

ヨルク・シュマイサー「変化Ⅱ トルソ」

胴体だけになったり(!)

ヨルク・シュマイサー「変化Ⅱ 風景」

こちらはもはや間違い探しです。

かろうじて枝の間に目が薄く残っているのが分かるでしょうか?

 

ヨルク・シュマイサー「変化Ⅲ ゴルゴン」

こちらは別のシリーズです。様々な表現が組み込まれています。

 

③考古学

ヨルク・シュマイサー「海岸のかけら」

これはシュマイサー自身が保管していた海岸からの取得物です。

ドイツにいたころ遺跡の発掘もやっていたシュマイサーにとって、考古学は生涯の興味の対象になりました。

ヨルク・シュマイサー「古事記のためのスケッチ」

考古学の知識は各国で文献を調べるときにも役立ったに違いありません。

ヨルク・シュマイサー「日記と100の蕾」

特に貝殻や植物の種など、抽象的でバリエーション豊富なものに深い関心があったようです。

ヨルク・シュマイサー「雪と山々」

小さいものだけでなく、大きなものも作品に取り込まれています。

 

ヨルク・シュマイサー「マングローブについて」

版画なので小さい作品が多いのですが、細かい表現なので見ごたえはあります。死ぬまで好奇心を失わずに描き続けたこともみどころです。★

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