映画「ザ・スクエア 思いやりの聖域」を見ました。
場所はヒューマントラストシネマ有楽町。男子トイレにも広告(?)が。
主人公は現代美術館のチーフ・キュレーターであるクリスティアン。いわば美術館の幹部で社会的地位も高いエリートです。
ストーリーの主軸は2つ。ひとつはタイトルにもなっている「ザ・スクエア」というアート作品。美術館の内外の床に白いテープのようなものを正方形状に貼っただけのシンプルな作品です。作品の説明は「この中では人々は平等に扱われる」とあります。
作品のコンセプトはいいが、あまりにも平板なメッセージなので宣伝が問題。そこで広告代理店に外注するが、この代理店がアップした動画が物議を醸します。
もう一つがクリスティアンのスマホ盗難事件。物語の冒頭でスマホを盗まれた彼はGPS機能によってスマホが貧困層が住むマンションの住民に盗まれたことを突き止めます。そこでマンションの全戸に脅迫状を送るという手段に出ます。こちらも後に騒動を招きます。
上映の後は会田誠氏のアフタートークがありました。会田氏によるとこの映画は芸大アートの欺瞞がこれでもかと大量に盛り込まれており、「俺が撮ったのかと思った」とのこと。
氏によると映画内のそのような「現代アート業界あるある」は例えば・・・
・美術館の学芸員の軽薄な人物像
・展覧会関係者のパーティーで、テクノ系音楽で踊るジジババ
・セックスに対する回りくどい遣り取り
などなどです。
特に会場の反響が大きかったのはレセプションパーティーの余興として呼ばれた猿人間(?)
アーティストのパフォーマンスのはずが本当にパーティーをめちゃくちゃにしてしまいます。パフォーマンスが高じてトランス状態になってしまったのでしょうか?
近い例は思い浮かびませんが、強いて言うなら全裸パフォーマンスのダダカンこと糸井貫二氏でしょうか。
ぼくとしては冒頭のどう考えても現代アートを理解しているとは思えない記者のあまりにも淡白なインタビュー、いつもガラガラの展示室などが気になりました。
そのインタビューでも登場する砂を積んだような作品。
日本では「もの派」を髣髴させますが、作中ではランドアートのロバート・スミッソンを髣髴させます。
この砂山は作中で壊されて学芸員の手で修復されるなどかなりぞんざいな扱いです。本当にアーティストにリスペクトして展示してるのか、怪しいものです。
それ以外にも美術館や作品が出てくるシーンは多く、美術ファンはかなり満足いくと思います。ですが高尚でクールな美術作品の展示室で行われる会話があまりにも下世話で笑えます。
個人的には巨大なモニターに大写しになる不安げな表情の男性の作品が印象的でした。
こちらは立体ですが、ロン・ミュレクの作品を思い浮かべました。
映像もきれいで展開も現代社会の欺瞞を突くものでおすすめの映画です。ただ明確なオチやハッピーエンドを望む人にはどうか分かりませんが・・・★★