2019年5月27日
  • 日々観た展覧会や関連書籍の批評をしていきます。

おすすめ展覧会カタログベスト10

展覧会ごとに販売されるカタログ。最近は一般に流通しているものも多いですが、中にはその美術館や、通信販売でしか買えないものもあります。

 

その展覧会でしか見れない貴重な図版や、もしくは芸術家の個展の場合は過去作全てが載った百科事典のようなものが付いていることもあります。これがその場限りのインスタレーションアートの場合、唯一の資料になることもあります。

 

また単に本そのものとして魅力的なものも多くあります。そんなカタログが結構家に溜まってきたので、気に入ってるものをピックアップしてみました。

10位.九州派展

九州派とは1950年から1960年代に活躍した芸術家グループ。近い時期に活動した具体ネオ・ダダに比べると炭鉱労働者など職に就きながら芸術活動もするというタイプが多かったのが特徴です。

それだけに表現もアスファルトをキャンバスに叩きつけるなど、泥臭い作品が多いです。展示するスペースも保存するスペースもなかったので、作品が残っていないことが多く、この本の写真でしか見ることができないものも多いです。

同時に路上の展覧会の様子も分かります。

28人の主要メンバーのインタビューが載っているのも貴重です。1989年の福岡市美術館の展覧会カタログですが、現在までこれを上回る規模の展覧会は行われておらず、そういった意味でも貴重な本です。

 

 

9位.福田美蘭展

2013年の東京都美術館での個展のカタログです。

福田美蘭さんはデザイナーの福田繁雄さんの娘さんです。

繁雄さんもポスター以外にも立体など様々な作品を残されましたが、美蘭さんはそれに輪をかけて多様な作品を制作しています。

基本は絵画作品が多いのですが、国内外の美術史を研究したうえでその枠組みを越えた作品は実は色んなメッセージが込められています。

またポップカルチャーを取り込んだ作品も多く、誰が見ても面白い作品も多いです。

美蘭さんの作風も変化に富んでいるので、こういった一冊にまとまったカタログは嬉しいです。

 

 

8位.遠藤利克 聖性の考古学

2017年の埼玉県立近代美術館での個展のカタログです。

芸術家の建畠哲氏が同美術館は歯応えのある展覧会が多く、本展も大して広くもない企画展示室の部屋に遠藤氏の巨大な作品を無理やり押し込めるという意味でも異色の展覧会でした。

カタログにはその展示の様子を記録した写真も付いています。

遠藤氏の作品は水、火、大気などを彫刻として展示するというインスタレーション作品が多いです。俗にポストもの派などと呼ばれますが、確かにガラスや石をそのまま展示したもの派を発展させた表現だといえます。

海外での展示や・・・

会場を水浸しにしたり・・・

作品を燃やしたりするなどその場限りの展示が多いのでこの本は大変貴重です。

学生時代からの作品を網羅しているのも評価が高いです。

 

 

 

7位.ドゥエイン・ハンソン展

1995年に東京、香川、大阪を巡回した展覧会のカタログです。

日本ではほとんど見ない作家さんで、僕も実物を見たのはニューヨークのホイットニー美術館だけです。

スーパーリアリズムという一時期流行った超リアルな絵画や立体を制作する人たちの一人です。

ハンソンの作品はアメリカの労働者が多く、過酷な労働環境を示すものが多いです。またアメリカの貧困層は食の偏りにより醜く太っていることが多く、普段目を背けているものを白日の下にさらすという意図が込められています。

中にはもっとストレートに惨劇を表現した作品も。一方美術館の受付の位置に受付嬢の作品を置いたり、ユーモアを発揮した作品もあったようです。

 

 

6位.特別展 三木富雄

1992年、渋谷区松濤美術館での個展のカタログです。

40歳で夭折した作家さんで、耳の彫刻で有名です。

カタログの内容も耳、耳のオンパレードです。耳以外の作品も載ってますが、あまり売れなかったようです。

私が耳を選んだのではない、耳が私を選んだのだ」という名言を残した作家さんで、その人生は耳に魅入られ、そこから逃れられない人生だったと思います。

展覧会の様子を示す写真も掲載されていますが、衝撃だったのは1970年の大阪万博での巨大な耳の彫刻。見てみたかったです。

 

 

5位.BASARA展

2010年、スパイラルでの展覧会の際制作されたカタログです。

主催は現代芸術家の天明屋尚で、当然彼自身の作品も展示されています。

日本の文化はワビサビという風潮に反発し、新しい機軸を打ち出したもので、岡本太郎が発見したという縄文土器に始まって・・・

ブルーム・タウトが批判したという日光東照宮など過剰な装飾を再評価しています。

古代から現代の暴走族まで日本の過剰性は脈々と受け継がれており、それを豊富な図版を用いて解説しています。展覧会を見てなくても十分読める内容です。

 

 

4位.アーキ・ラボ 

建築・都市・アートの新たな実1950-2005

2004年、森美術館での個展のカタログです。

戦後の国内外の前衛建築運動を網羅したもの。

その後も同種の企画や本も出版されましたが、ここまで大規模なものは現在に至るまでなく、森美術館の資金力と調査力が十二分に発揮されたものとなっています。

有名どころだけでなく、マイナー建築家のペーパープロジェクトに終わった作品も多く紹介されており、カタログだけでも非常に見ごたえがあります。

 

3位.日本の1970年代

2012年、埼玉県立近代美術館の展覧会カタログです。

1970年代の熱気を伝えるカタログで、文章が少なく、ほとんどのページがカラー図版で構成されるというのも異色です。

本としても横尾忠則のポスターなど70年代風なのかサイケディックな色使いの図版が多く、当時の日本の熱気を表しています。

芸術だけでなく建築やファッションについての言及もあり、のちに登場した同種の「○○を振り返る」形式の展覧会と比べても優れた展覧会でした。

 

2位.ネオ・ダダJAPAN 1958-1998

1998年の大分市アートプラザの企画展カタログです。

アートプラザは1966年竣工の大分県立図書館を改修したもので、ネオダダともかかわりが深い施設です。

現在でもこの時代の作品を常設展示しているほとんど唯一の施設でもあります。

ネオ・ダダ・オーガナイザーズは1960年に半年だけ活動していた芸術家集団で、同時期の具体や九州派と比べて極めて短命な組織です。

しかしその後メンバーは世界的な芸術家になった人物が非常に多く、当時の活動を振り返るのは非常に意義深いです。

豊富な図版ともに後半では個別メンバーも紹介されており、見た目にも楽しいカタログです。

 

1位.メタボリズムの未来都市

2011年、森美術館での展覧会カタログです。個人的にも本格的に建築に興味を持つようになったきっかけの重要な展覧会です。

メタボリズムは日本が世界に発信した唯一の建築運動です。しかしこれ以前にはそれを包括的に研究した本や展覧会はなく、ここでも森美術館が重要な役割を果たしました。

貴重な図面や模型が多数出品されただけでなく、未実現プロジェクトのCG動画が多数投入され、非常に充実した展覧会でした。カタログも資料的側面が強くなっています。

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