東京国立近代美術館(千代田区)の福沢一郎展このどうしようもない世界を笑いとばせを見てきました。
福田一郎といえばシュルレアリスム絵画で有名です。
しかしシュルレアリスムを描いていたのは戦前の一時期のみ。戦後は大きく作風が変わります。
今回はその全体を俯瞰する展覧会です。
学生時代の最初期の作品からすでにシュルレアリスムの萌芽が見られます。
特に「サンマロー駅」はただ椅子が並んでいるだけなのに、その配置や蜘蛛の巣状の床の目地などから不安定感を強調しており、味わい深い作品です。
全期間通してみてもシュルレアリスム期の作品が最も面白く、有名になるのも分かります。
「他人の恋」とありますが、4人の人物はお互いがお互いにまったく興味を抱いていないように見えます。
しかし同時に挿絵などから丸写しにした構図の作品も多く、非常に軽薄な印象も受けます。
作品は西洋の影響を強く感じます。
一方構図はこちらの作品のパクリかも?
複雑な構図に見えますが、この絵も挿絵のマルパクリ。
着眼点は古賀春江氏などとも近いよう見えます。
一連の作品から福沢氏が科学というものに深い興味を抱いていたことが分かります。
この作品は加えて建築的要素もあります。
ヨーロッパのナチスの台頭のせいか、これも政治的なテーマです。
一見真ん中の巨大な顔が煽動者に見えますが、実は集会に向かう下の人々で、、巨大な顔はそれを噴き出して笑っている、と考えると面白いです。
帰国後は国内でも戦争近づいてきますが、福沢氏はそれすらも題材の一つに過ぎなかったようです。
極端に縮小された大砲がおもちゃのようで可愛いです。
が、快進撃もここまで。
この作品は従軍画家として描いたものですが、これも挿絵のマルパクリです。
迫力も上の階にあった藤田嗣治などには遠く及びません。
福沢氏は戦後も長く生き、多くの作品を残していますが、シュルレアリスムより後の作品にはあまり魅力を感じませんでした。
ブラジル、アメリカ、地獄、神話など多くの題材を元に描きますが、生涯借り物なイメージが拭えませんでした。いっそシュルレアリスムな軽薄路線を貫いて欲しかったです。★
★動きと時間「MOMATコレクション」 – 博司のナンコレ美術体験2019年3月23日 7:55 PM /
[…] 下の階でやってる「福沢一郎展」に合わせてシュルレアリスムが増量する、ということもなく普段どおりでした。 […]