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建築図鑑102★★★伝統と現代の融合「伊豆の長八美術館」

静岡県松崎町の伊豆の長八美術館に行ってきました。

伝説的な左官職人、入江長八の美術館です。

 

場所は伊豆半島の南端近くです。東京からだと東海道線を熱海で伊東線に乗り換え、その後、伊豆急行、さらにバスで40分とかなり遠いです。

そんな松崎町ですが、地元の誇り、長八にちなんでか一帯はなまこ壁だらけ。

ここまでする必要はあるのか?というのもあります。ちなみにこちらは観光案内所。

こんななんちゃってナマコ壁も。

ちなみに最寄りのバス停で降りると、何も聞いてないのに近所のおばちゃんが近づいてきて、美術館の道案内をしてくれました

もしかしてバスが来るのを見張って、かたっぱしから案内してるんですかね?

 

美術館の設計は石山修武氏。

バブル期には安藤忠雄氏、毛綱毅曠氏などとともに、野武士と言われ前衛的な設計で注目されました。

建設には入江長八を慕う全国の左官職人が集まって協力しており、いたるところに左官の技術が使われています。その多様さから一種の左官博物館と化しています。

左官といえば壁の仕上げだからか、正面ファザードは壁っぽい作りです。

ただ抽象的なデザインはポストモダンっぽく、伝統と現代が融合した面白いデザインです。

パッと見左右対称に見えますが、窓の大きさが違います。

建物側面です。

建物正面のみが2階建てで、奥に行くほど低くなるという作りになっています。

内部もこの傾きに沿って階段が左右に付いています。

美術館横の丘に登って上から見たところです。ギザギザの形に天窓が付いています。

恐竜の背びれみたいで面白い形です。

建物上部から突き出てるのはライト。色んなところからトゲみたいに飛び出しているのも面白いです。

門(?)を潜った正面入り口前です。

 

一つ目の展示室です。

小さい建物だけあって、外から見えている形状がそのまま中に現れているのが面白いです。

天井と壁にスリットが入って自然光を取り込んでいます。

その割にはまぶしくなく、かなり考えられた設計のようです。

2階のドーム天井内に設置された天女。現代の左官職人が仕上げています。

2つ目の展示室。形状は基本同じですが、壁の仕上げや色などが変えてあり、印象はかなり異なります。

真ん中にある謎の物体。展示の什器として使われていますがこれも左官職人の作品です。

 

入江長八「寒梅の塗り掛軸」

さて、入江氏の作品ですが、左官仕上げの際に壁を盛り上げて半立体的な絵を作るというものです。

特に面白いと感じたのがだまし絵のような作品で、これは屏風を再現しています。

虫食いまで再現しているとか。

入江長八「富嶽」

こちらも枠を再現しただまし絵になります。

 

この美術館に隣接しているのがカサ・エストレリータ(お土産屋の背後の建物)。

前面に先端にステンドガラスを使ったアンテナのようなものが2本立っています。

前面の広場下は石山氏のトレードマークであるコルゲートが用いられています。

2階の広場はハッとするブルーが使われています。

ショップ兼レストランとして美術館の実質増築として建てられたものですが、2階のレストランは閉店して使われていません。

真っ白な美術館に対してこっちは廃墟化しておりかなり寂しい状況。

 

美術館の道路向かいにあるお寺浄感寺は長八が育った家です。

長八は左官以外にも絵画や彫刻など多芸だったようです。

このお寺の天井画も長八の作品。

描かれてから一度も修繕していないそうです。

龍の眼は日の光に反射して金色に輝きます。

見る方向によって龍の表情も変化するとか。

 

 

長八とは何の関係もないですが、隣接する浄泉寺は変な木像がいっぱいです。

こういうのが育つ土地なのかもしれません。

 

遠い上に小さい建物ですが、石山氏の代表作に恥じない出来で、見に行く価値は十分あります。★★★

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