• 日々観た展覧会や関連書籍の批評をしていきます。

建築図鑑64★★★合体団地の誘惑「南永田団地」

横浜市南区の南永田団地に行ってきました。

モダニズム建築を顕彰するDOCOMOMOに対抗して提唱された「ドコノモン」には紹介されていましたが、他の団地、集合住宅本には紹介されていない物件です。

この本によると、「スーパーまでどこまでも廊下が伸びている」とのことでしたが・・・

最寄り駅は京急井土ケ谷駅ですが、そこから徒歩20分。しかも山をひとつ登る必要があります。

ここが徒歩の場合の団地の入り口。

団地住まいの高齢者に歩ける距離ではなく、基本バスでのアクセスになります。

 

ぐるっと見て回ると1,2時間はかかる結構広い団地です。

面白かったポイントをまとめて紹介したいと思います。

 

1.傾斜を無視した接続

google mapで検索すると、上のような、太い道路に囲まれた、折れ曲がった長ーい団地の地図が出てきます。

南永田団地は山がちな傾斜の激しい土地に強引に立てられた高層団地群です。

各々の団地の足元には公園や駐車場があります。

元が山だけにかなり自然豊かです。

徐々に建て増ししていっているため、デザインはバラバラ、その上地面が傾斜してるので、一階の高さもバラバラです。

にも拘らず、デザインの違いを無視して強引に接続しています。

また違う階を接続することも普通に行われています。

例えばここは左の4階と右の2階を平気で接続しています。

 

こんな強引な接続もスーパーへのスムーズなアクセスのため。

ここは駅からも離れており、しかも周りと高低差が激しいため、団地の一角にあるスーパー「エンゼルファミリー永田台店」およびその周囲の商店街(郵便局、塾、美容院など)が唯一の生命線です。

団地の4階から伸びている歩道橋の数々も全てスーパーへ指向しています。

ブリッジが前後に重なるアングルです。

 

団地の接続部いろいろ。色んなパターンが楽しめます。

 

特にここなどは階段の配置が手前の団地は長編に対して平行に、奥は直角に付いています。

このちぐはぐ感がたまらない。

団地の廊下がどこまでも続いてるかのような感覚はかなり面白いです。

 

2.スキップフロアの楽園

スキップフロアとは団地のエレベーターの停止階を数階おきにし、その階のみ横移動の廊下を設けるという設計方法です。

この写真の場合、最奥中央の団地は普通の団地、右側がスキップフロアタイプの団地です。

エレベーターが止まらない階の住民は最寄階までエレベーターで行き、そこからは階段で行きます。

例えばこの団地だと5階の住民は4階までエレベーターで行き・・・

4階の廊下で居室近くの階段まで行き、そこから1階分だけ登って部屋にたどり着きます。

廊下のない階の部屋はその分室内を広く取れるというメリットがありました。

しかし

・部屋に行くまでのルートが煩雑

・1,2階とはいえ階段を使う必要がある

などのデメリットがあり、徐々に作られなくなりました。

南永田団地では上層階のみ各階に廊下が付いているものなど、変則的なスキップフロア団地が数々あります。

またスキップフロアで階段が廊下と並行して付いてるタイプはやたら廊下が狭くて歩きにくいです。

いろいろ試行錯誤のあとが見れるのがかなり楽しいです。

 

3.団地デザインの多様性

色んな時代の団地が混ざっているだけに、団地デザインを見ていくだけでも楽しいです。

例えば廊下階に設けられた共有部分。単なる駐輪場になってるところもありましたが、なかにはこんな滑り台が付いているタイプも。

キノコが重なっているような面白い作り。

特に高層階は開放的。

高層階からは眺めもかなりのものです。

 

この共有部分を外観上どうアピールするかも見ものです。

 

他公園遊具も見どころです。プールもありました。今も使われているかは疑問ですが・・・

 

ちなみに小学校はこの団地に内包されてます。

こんな長い廊下を通って通学するのはなかなか楽しそうですね。★★★

 

コメント一覧

理想の団地を求めて – 博司のナンコレ美術体験2022年12月1日 7:44 PM / 返信

[…] 南永田団地 […]

コメントを残す