• 日々観た展覧会や関連書籍の批評をしていきます。

★★古典から最新まで「建築 × 写真 ここのみに在る光」

東京都写真美術館の「建築 × 写真 ここのみに在る光」【2018.11.10(土)2019.1.27(日)】を見てきました。

 

ありそうで意外となかった建築写真のみを集めた展覧会です。

豊富なコレクションを持つ写真美術館ならではですね。

フェリーチェ・ベアト「愛宕山から見た江戸のパノラマ」

初期の写真技術では動く被写体を映すのは難しかったようで、動かない建築物は絶好の被写体になったようです。

初期の写真で特に面白いと思ったのがこちら。

江戸といってもその光景は昭和初期とあまり変わりませんね。

 

ベレニス・アボット「ウォーターフロント 変わりゆくニューヨーク」

建築家・レム・コールハースが指摘している通り、ニューヨークの激変というのは写真家にとっても魅力的な被写体だったでしょう。

エンパイヤステートビルが見切れてしまっているのはビルが高すぎて空撮技術がなかったせいでしょうか?

だとしてもあまりうまい写真じゃない気がします。

山脇巌「建築の習作(バウハウス、デッサウ)」

バウハウスの早い戦前の紹介例です。

正方形の細い窓枠にガラスが並ぶ様子は今見ても鮮烈です。

山脇巌「建築の習作(看板(レナニア オッサグ)」

こちらも今日見てもかっこいい。きれいにRが取れた窓が整然と並んでいます。

ベルント&ヒラ・ベッヒャー「9つの戦後の家」

日本でも非常に高名な、ドイツのベッヒャー派の始祖の作品。

屋根の勾配が若干違うなどしてますが、戦後の世界的な住宅大量供給を如実に示す作品です。

渡辺義雄「伊勢神宮」

建築写真には一般人が見ることができない光景を伝える役割もあります。

伊勢神宮は通常みることができない建物です。

写真からは機能がはぎとられ、象徴性のみが過度に強調された姿がよく読み取れます。

 

石元泰博「桂」

同じく、外国から見た日本のイメージドンピシャの作品。

日本人から見るとただのデカい家なのですが・・・

 

村井修「香川体育館」

村井氏の丹下健三の建築を撮った一連の写真は、陰陽を強調することで細かい部分が隠され、構造と形態が一体になった様子がよく分かり、明快さが好きです。

村井修「国立箭内総合競技場」

こちらは空を広く映すことで、上昇していくイメージを持たせたのでしょうか?

 

二川幸夫「愛媛県南宇和郡西海町、外泊集落」

二川氏は写真家としてより、建築評論家、雑誌編集者のイメージが強いです。

しかしこの初期作品は彼が日本建築の特異さに深い関心を持っていたことが分かります。

家一軒一軒が城壁に覆われた家々は山間部には今日もある風景ですが、この執拗な防御態勢は何なんでしょうか?

 

奈良原一高「緑なき島-軍艦島: アパートの俯瞰」

奈良原氏の軍艦島は陰影を強調して工場っぽさが強調されているのも良かったのですが、加えて生活者が映っているのは今日もう見れない光景なので基調に感じました。

宮本隆司「九龍城砦」

こちらももう見れない光景。日本でもファンが多く、宮本氏の功績は計り知れません。

看板がめっちゃ出てますが、こんなとこで買い物する人いるんでしょうか?

柴田敏雄「Bridge:Second Schelde Bridge, Temse, Belgium 2013」

ヨーロッパの橋の写真。渋すぎる選択ですが、国内のインフラを撮ってきた柴田氏からすれば普通の選択なのかもしれません。

異様なまでに青い空に、日本の感覚からすると薄すぎる橋。まるでCGのようです。

 

建築写真の歴史が俯瞰でき、しかも建築の勉強もできる。好企画です。★★

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