埼玉県さいたま市の埼玉県立歴史と民俗の博物館に行ってきました。
設計者は前川國男氏。
前川氏は1960年代中ごろから外観に打ち込みタイルを使った博物館や美術館を全国に大量に作るようになります。
それらは遠目にはどれも同じに見えますが、動線計画やタイルの色はどれも違っており、立地する公園などに溶け込んだデザインになっていました。
中でも埼玉県は埼玉会館と埼玉県立自然の博物館も前川氏のタイル建築となっており、ちょっとした前川王国です。
本博物館も他の前川建築と同様、大宮公園の北端に位置しています。
公園での散歩の休憩に寄れるよう、公園側にも入り口があり、そちらは売店、喫茶店直通になっています。
平面構成は中庭を取り込んでコの字型に建物が並んでおり、廊下を挟んでそれぞれ常設展示室、企画展示室となっています。
中庭には元から生えていたと思われる木々が覆い繁っており、大変雰囲気があります。
ここにある階段で2階デッキに上がれるようになっていますが、封鎖されていました。
また床と壁のタイルは黒と赤のツートンカラーです。
抑えた色合いが多い前川氏にしてはかなり強烈な色使いです。
この床面は館内にも続いており、本建築の強い個性になっています。
エントランスの様子。
入り口から正面がそのまま庭に出れるようになっています。タイルだけでなく天井にはPC梁を用いるなどしてエレガントな空間を作り上げています。
エントランスに大量に投入されている特徴的な照明器具。
実際には一般的な蛍光灯を使って照らすようです。
喫茶店。レストランというより食堂のようなメニューでした。
ショップも充実してるとは言い難い・・・。
ただテラス席は気持ちよさそうでした。
休憩所として一般開放されているのは◎
1階より地階展示室を見る。前川氏の美術館、博物館建築の多くは周囲に溶け込むため木々より低い建物になっています。
そのため収まりきらない機能は地下に持っていくしかありません。
ただ同時に地下にも光が届くよう工夫がされています。
公園を地下まで掘り込み、2階吹き抜けの巨大な窓を実現させています。
ここに展示されている板碑がこの博物館のメイン展示物です。
板碑は鎌倉から戦国時代ごろまで盛んだった供養、もしくは自分自身の生前供養を願って作られた塔婆です。
関東、中でも埼玉県で盛んに作られたようです。
写真は5.37mある日本一巨大な塔婆です。
打ち込みタイルの表現が目立ちますが、コンクリート打ちっぱなしや、階段の手すりなどもかなりこだわっています。
コの字型の配置計画のおかげで館内のいたる所で、外部に視線が抜けるポイントが散見されました。ここがこの博物館の最大の特徴かなと思います。
優れて体感型の博物館で、来てみると写真で見る以上のものが得られると思います。★★★
建築図鑑213★★東京文化会館 – 博司のナンコレ美術体験2021年9月4日 3:45 PM /
[…] 前川氏のデザインは初期の世田谷区民会館のようなブルータリズム作品から東京都美術館や埼玉の博物館のような打ち込みタイルの穏やかな作品になっていくのですが、どちらの作品にも共通しているのは装飾が少ない、ある種そっけない建物であることです。 […]