大阪府狭山市の大阪府立狭山池博物館に行ってきました。
設計はおなじみ安藤忠雄氏。
狭山池は日本最古のため池と言われており、工事中に鎌倉時代の樋が見つかりました。
日本の土木技術史上非常に貴重なものなので、水を堰き止める堤体自体を保存する施設を作ることになりました。
同時にこの狭山池は以前さやま遊園という遊園地があったこともあり、市民憩いの公園でもあるので、その整備も並行して行われることとなりました。
外観は安藤氏の建築の中では非常に異色です。
黒川紀章氏でもここまでしないだろうと思われるほどのそっけない箱で、もはや博物館に見えず、データセンターか何かのようです。
博物館へは公園の外からでも中からでもアクセス可能です。
ただしどちらから入ってもこの水盆や滝を横切って回り込む必要があることは変わりません。
水を堰き止める堤体がメイン展示なので、この箱型も堤をイメージしているのでしょうか?
そう考えると手前に水が張ってあるのも納得がいきます。
階段を降り、さきほどの水盆の真下に入り、滝を見ながら博物館に至ります。
博物館内は全く水気はないですが、そのテーマを強く意識させられるアプローチです。
堤は地下1階、地上2階の3層ぶち抜きでそのまま展示。
地下部分には樋も展示されています。
展示はこれ以外にも土木関係の資料が充実しています。
関連する書籍を集めた図書室も付属します。
展示室の最奥には建築の解説コーナーも。
新建築2001年11月号より
形状は単純ですが、アプローチが複雑なのでいつもに増して全体の把握が困難です。
上記のルート以外に実はカフェに直接アクセスするルートもあります。
カフェからは公園の方が眺められます。
春には桜並木になるらしく、この造成も安藤氏が行いました。
安藤氏にとって90年代は飛躍の10年であり、国内外で次々にビッグプロジェクトを手掛けます。
一方この建物は2001年竣工ですが、この頃になると安藤氏の設計は停滞を迎えます。
関東や海外の作品はともかく、関西でも兵庫県立美術館とアメリカのフォートワース美術館がそっくりだったり手抜きが始まります。
本建築も堤のまるごと保存という全く新しい挑戦が見れる一方、大規模過ぎる土地造成、パターン化する動線などマンネリズムも始まっています。
この建物はそんな功罪が入り混じっている気がしました。★
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