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建築図鑑118★幾何学の誘惑「世田谷美術館」

世田谷美術館に行ってきました。

設計は内井昭蔵氏。

美術館の多くは公園内にあることが多いですが、本建築も世田谷区の巨大公園、砧公園に埋もれるように建っています。

遠目にはジミ~な美術館ですが、細かいデザインが変わっています。まず壁面は正方形のロの字がひたすら繰り返されています。

ところどころ穴が貫通してたり、穴がない単なる■になっていたりして変化をつけています。

次にエントランス前の傘立ての上を覆う屋根。柱は正三角形を逆にした形をしています。

この屋根が美術館の外周をずっと続いており、一部藤棚にもなっています。

フランク・ロイド・ライトに影響されたというデザインは、工業的でありながら人にやさしい独特な装飾になっています。

そして美術館のアクセントになっている円形の展示室と屋根は円弧

美術館は大きなところから細かいデザインまで正方形、正三角形、円弧の三要素のみで形成されています。

正方形は美術館のマークや・・・

内外の床のタイルのパターンに。

 

正三角形は柱が大半ですが、他に照明にも使われています。

この正三角形の照明はかなり印象的です。

また三角形の柱が内部でも各所に顔を出して、建物を印象的にしています。

 

また円弧は屋根の他に階段の手すりや・・・

風除室の金属部分にも使われています。

 

最も特徴的なのがエントランスの光天井です。

とはいえ面白いところは多々あっても、玄人向けの美術館なのかなという印象です。

デザインが個性的でありながら主張しない、ある意味世田谷っぽいかも。

 

アンソニー・カロ「垣間見るアルカディア」

ところで本美術館が竣工した1986年は日本経済の絶頂期。だからなのか野外彫刻は当時の一流の海外彫刻家が脈絡なく大量に作品を作っています。

トニー・クラッグ「三葉虫」

美術館の動線上に入ってないので無視されがちですが、こっちは結構主張が激しいので、建物が物足りない人にはいいかも。

この彫刻は雨水がたまって鳥とかの水飲み場になりそうですね。

保田春彦「赤錆の壁がある砦」

人があまり来ないせいか、彫刻の上で猫が寛いでました。

考えたら人が触ってはいけない巨大彫刻の上は猫や鳥にとっては格好の休憩場所ですね。

ところでこんな落ち着いた建物でありながら、本建築はポストモダン建築の実例としても挙げられます。

全体の形状は大人しいですが、過度な幾何学性とその執拗な繰り返し。また中庭とエントランスの階段の唐突なナナメったパターンなどは確かに磯崎新などに通じるところがあります。

健康性を強調した内井氏ですが、実は隠れた凶器があったのかも?★

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