川崎市岡本太郎美術館(川崎市)の「第21回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)」【2018年2月16日(金)~ 4月15日(日)】を見てきました。
岡本太郎現代美術賞は岡本太郎の遺志を継ぎ、「時代を想像するのはだれか」を問う賞です。この大上段に構えた設立趣旨だけあって、過去の受賞者は、山口晃、開発好明、西尾康之、天明屋尚、風間サチコ、淀川テクニックなどなど錚々たる顔ぶれが揃っています。西洋型のミニマルアートやコンセプチュアルアートより、饒舌な作品が受賞する傾向にあるようです。
今年も太郎さんを継ぐような圧倒的な熱量と普遍性、そして日本の土着性を感じる作品が多数出品されていました。
岡本太郎賞の作品はこちら。
ピンク色のイラストとグッズが空間を埋め尽くすインスタレーションです。技術的にも思想的にも技巧性のないストレートな作品で、このような作品に大賞を贈るのは評論家の人たちには勇気がいったのではないでしょうか?
岡本敏子賞の作品。個人的にはこちらの方が好きでした。床まで作品があるので埋め尽くし度はこちらの方が上。
壁と床には鳥のようなものが描かれた絵馬で埋め尽くされます。
正面の絵画作品は巨獣が血まみれでのたうち回ってます。こちらの作品にも同じカラフルな鳥が描かれています。足元の人々は巨獣とは全く無関係に休日を謳歌しています。アイドルの後追い自殺を題材にした作品とのことなので、社会に存在する断絶を表しているのでしょうか?
頭上では鳥が集まって児童書「スイミー」のごとく一匹の巨大な鳥になっています。
インスタレーション抜きにした絵画作品としても今出品作の中で群を抜いていると思います。
特別賞の作品です。
ドアの中は薄暗い部屋。
壁には顔が塗りつぶされていたり、この部屋自体を描いた不気味な絵画。
他にも砂を盛ったコーヒーカップ、テレビにエンドレスに流れる謎のイメージなど不気味な雰囲気です。
ポルターガイストを再現した本作は突然電灯が点滅する、テレビが付く、扇風機が回る、ドアが動くなどの仕掛けがオートマチックで発動します。
要はお化け屋敷と変わらないのですが、遊園地にはできないエンタメ性を廃した丁寧な仕事です。展覧会で体験するお化け屋敷というのも新鮮です。
それ以外の入選作品の中にも入賞作品に勝らずとも劣らない作品が多かったです。こちらは非常に精緻に描かれた作品にも関わらず題材が「釈迦」と「シャケ」をかけたダジャレというだけの、会田誠ばりの人を食った作品です。
真ん中に描かれた釈迦の形をしたシャケの切り身。確信犯的にふざけてます。
周りにいる人や両端の逆さ吊りのシャケ、手前に置かれたいろんな形のシャケの切れ端など色んな意味があるようですが、知識がなくても楽しめる作品です。
コピー機から出力されているようにも、コピー機に嵌まり込んでしまったようにも見えます。
すごくふざけた人にも見えますが、きっちりと揃えた髪と靴、そしてなにより名刺交換という儀式が、日本人の働き方に対する疑問を呈しているようにも見えます。
いつもは海岸で作品を発表しているみたいです。大小不思議なクリーチャーを創造しているみたいですが、今回は小さい作品が700体。形状は様々でもどれもパステルカラーなので可愛く感じます。
入賞以外にもインスタレーション作品は多く入選してました。ただ入賞作品ほどの熱量は感じませんでした。
現地で題材を探し、ワークショップや展覧会を行うユニットです。
今回は過去の訪問地での活動を元ネタにしたクイズ番組がメイン展示。オリジナルの椅子や座布団にゆっくり座って見れるのが特徴です。
過去の絵ハガキやおみやげも販売。
本人のメッセージとして、「おばあちゃんになって、どちらか一人になってしまうまで活動を続けたい」とのこと。そう言われると応援したくなります。
他館のすぐ忘れてしまうような薄味の入賞展とは全く違う、ベラボーな展覧会です。これからもなんでもありを貫いて欲しいものです。★★★
★★★ベラボーなエネルギー「第22回岡本太郎現代芸術賞」 – 博司のナンコレ美術体験2019年3月24日 11:47 PM /
[…] 去年の展示で出品された作家さんの中にはその後個展などで活躍されている方もチラホラいます。 […]