ワタリウム美術館(外苑前)の「超えていく風景」【2018.9/2-12.1】を見てきました。
梅沢和木氏とTAKU OBATA氏の2人展です。
梅沢氏はネット上から拾ってきた画像を加工、印刷し、そこに加筆して作品を完成させます。一方OBATA氏もコンピュータ上でのバグやディフォメを再現したかのような彫刻を製作しています。
両者ともパソコン上と現実世界を行き来して作品を完成させるという共通点があります。
会場内には2,3階の吹き抜けを中心に壁面は梅沢氏の印刷作品に埋め尽くされ、さらにその上に絵画作品が展示されています。
背景のプリントは過剰なまでに引き伸ばされ、ネット上の過剰な画像の引き伸ばしを髣髴させます。OBATA氏の彫刻の効果もあって、ネット上にいるかのような感覚をおぼえます。
梅沢氏は話題性の割には意外とまとめて作品を見る機会はありませんでした。
改めて見ると、混沌としたイメージの集積の中にも具体的なイメージが見え隠れします。
この作品は船を思わせる形状が浮かび上がります。様々な画像の断片が散らばる様子は東日本大震災を思い浮かべます。ただ製作年は震災以前なので、ネット上のカオスが現実に流出してきたことを連想させます。
吹き抜け部分に掲げられた巨大な作品です。
下に集積した画像の残骸と一本だけ立つ信号機はやはり震災の瓦礫を思い浮かべます。
ただ同時に瓦礫が立ち上がり、さらにそこから仏像の頭と腕が生えている様子は再生も感じさせます。
やはりこちらも震災のニュースで見た荒涼とした風景を思い浮かべます。
こちらはパソコンモニターを使った作品。他にも模型風の立体作品などもありましたが、作風は変化しません。デジタルと現実を行き来する梅沢氏にとって支持体が何であるかは大して重要ではないのかもしれません。
2階の作品で埋め尽くされた空間はなかなか楽しいのですが、3,4階はかなりあっさり気味だったのが不満でした。梅沢ファンはこれで大満足なのでしょうが・・・★