今回は神奈川県横須賀市の横須賀美術館に注目してみたいと思います。
設計者は山本理顕氏。主要な作品ははこだてみらい大学、埼玉県立大学など。システマティックな設計と、視線が抜ける透明感溢れる建物が特徴です。
建設地は観音崎公園。目の前が海ですぐ後ろは山。交通の便は悪いですが、面白いところに建てたものです。
建物そのものよりまず目につくのが緩やかな斜面。茨城県の水戸芸術館も芝生がありますが、あちらは平地。こちらは子供が転げまわって遊んでおり、人々との親和性ではこちらの圧勝です。
ちなみに芝生の向かって右側は若林氏の彫刻兼通路になっています。
美術館の入り口の前面にはレストラン、ショップ、ワークショップスペースが展開しており、そのためいつも人が絶えません。遊ぶ子供たちと寛ぐ大人たちが建築の景観に取り込まれ、楽しげな空気を作っています。山本氏も「ミュージアムよりアミューズメント・パークを作りたかった」とのこと。
入口入ってすぐにブリッジを渡るという他にはない演出が凝らされています。
このブリッジだけでなく地下1階から屋上まで視線が抜けるように工夫されており、ちょっとした探検気分が味わえます。
テキトーに写真を撮っても人々の動きが絵になります。
家具やサインの配置も考えつくされています。
展示室の順路は単純です。入り口から入り口からブリッジを渡ってぐるっと一周周り・・・
そのあと地下に降りて始めに渡ったブリッジから見えていた外周部を一周回る構成です。
屋上に登る途中で建物の天井裏が見えるようになっています。建物がガラスに覆われているのは海からの塩害を防ぐ狙いもあるとか。
屋上からの景色です。
ちなみに反対側はこんな感じ。
美術館の入館料を払わなくてもこの山から海に抜けるルートは使用可能です。
こんな開放感が味わえるのは斜面に沿って建物の過半を地面に埋め込んでしまったからです。
同じように透明感があり、通り抜け可能な美術館は金沢21世紀美術館が思いつきます。
ただ円盤型のあちらと違いこちらは立地条件上正面方向が決まっており、より明確に視線の方向を意識した設計になっています。
美術館職員がインタビューに答えている通り、このような空間だとそれを生かす展示を考えるのも一苦労。学芸員さんの腕が試される美術館でもあります。★★★
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