静岡市美術館の起点としての80年代【2019年1月5日(土)~3月24日(日)】を見てきました。
2010年オープンの新しい美術館です。
静岡駅前のビル3階に入居しており、地下を通っていけば駅から直結です。
新しい美術館らしく、白を基調にしたデザインはなかなか素敵です。
カフェ、ショップが入るエントランス空間はライトと柱によってエッシャー的不思議空間になっています。
1960年代や1970年代は展覧会も既に行われており、かなり研究が進んでいる印象を受けます。
一方1990年代は村上隆や奈良美智など旬なアーティストが多く、振り返るには至っていません。
しかし80年代はバブルまっさかりで軽薄で、見るべきものがない、というのが何となくの印象でした。
今回の企画はそんな80年代の評価を覆すことも狙いになっているのかもしれません。
エントランスに置かれているのは中原氏の作品。
作品ごとにまったく作風が変わる予測不能な作家です。
本作も全くの未見でした。
下半分はグロテスクな印象ですが、上部はポップな感じで印象が全く異なります。
宇宙生物のアンテナのような不思議な造形です。
タイトルから受ける印象としては生きている家、もしくは家の寄生虫といった感じです。
もう一点エントランスに置かれているのが巨大な金の器です。
遠目にはつややかですが、近づいてみるとかなり歪んでいます。
溶接がかなり甘く、穴が開いています。
結構薄手で、茶碗というより巨大な金樽といった感じです。
中原氏の作品は好きなのですが、このよく分からない作品を頭に持ってくるあたり、80年代のフワフワ感を物語っている気がします。
出品作家19名のうち、知っている作家は14名でした。
そのうち80年代を感じるのは1990年に夭折された諏訪直樹氏ぐらいで、あとはそういえば村上隆よりちょっと上だなと感じる程度です。
1968年展と比べるとさほど年月が経っていないのにこの落差は万博や安保闘争のようなイベントが全くなかったせいでしょう。
そのためかこの年代には赤瀬川原平氏や黒川紀章氏のような圧倒的なスターダムも存在しません。
そんな中でももっともスターに近いのが日比野氏だと思います。
本展覧会でも杉山さんや吉澤美香さんの作品は日比谷さんの作品に近く感じました。
これらに共通するのは何がいいのか分からない、だけでなく何が言いたいのか分からないということだと思います。
空白期を生めたものがスカスカの段ボールだったのは象徴的な事象だと思います。
この時代の特徴して上げられている「関係性」というのも1960年代の読売
アンデパンダンの頃からあった傾向だと思います。
とはいえ10点のオブジェを床置きしたり吊るしたりしているこの作品はかなり面白く感じました。
方向性はイマイチよく分かりませんでしたが、作品自体は面白いのもが多かったです。
一番は藤本氏の作品で、オルゴールを5つ同時に回して聴く作品です。
オルゴール自体が陶器の皿の上で転がる音も合わせて楽しめます。
また静岡では同時企画として静岡県下での80年代のイベントもアーカイブ化して展示していました。
作品はなく資料ばかりの展示でしたが、かなり気合の入った調査でこちらも楽しめました。★