• 日々観た展覧会や関連書籍の批評をしていきます。

★★アートシーンが生まれるとき「バブルラップ」(熊本)

熊本市現代美術館「バブルラップ」【2018.12.15()〜 2019.3.3()】を見てきました。

 

熊本市現代美術館は市の中心部、通町の商業施設の4階に入居してます。

入ると展示室より手前に漫画が満載された図書室があり、横にはレストランや子供の遊び場があります。

展示室より手前にそれらがあることは、美術館の敷居を下げ、誰にでも解放するという方針が設計からも伺える作りになっています。

ちなみに図書館の天井はジェームス・タレルの作品が設置されており・・・

本棚もマリーナ・アブラモヴィッチの「Library for Human Use」という作品で、本棚の中に椅子や枕が設置されており、本棚内で寝転んで蔵書が読めるようになっています。

ロビーにも宮島達男氏の作品が常設されている他・・・

現在は熊本城から移設した巨大模型が置かれていました。

 

さて、展覧会は、2016年の横浜美術館での「スーパーフラットコレクション」2017年の青森県立美術館での「スーパーフラット陶芸考」に続く、村上隆氏のコレクションの展覧会です。

 

現代美術家の村上隆氏は現在ではキュレーター、ギャラリスト、コレクターとしての顔を持ち、アートシーンのあらゆる分野で活躍されています。

 

特に横浜美術館での展示は巨大なホールに大型作品が大量に展示され、その物量に圧倒されました。

展覧会の始めには村上氏自身のこの展覧会の意図が書かれていますが、長い上に結構難解です。

要は展覧会のタイトル「バブルラップ」とは、かつての村上さんキュレーションの展覧会「スーパーフラット」のように、日本のアートシーンを表す用語だということ。その内容は1970年代の「もの派」の後を表し、日本民芸を含むものだということらしいです。

空山基「sexy robot walking」

展覧会の前半はバブル期の国内作品を展示。

この作品はバブル期ではなく新作ですが、空山さん自身がバブル期以来同じような作品を制作されているので、その時代は感じ取れます。

森美術館やナンヅカなどで展示されたセクシーロボットの別バージョンです。

日比野克彦「GRAND PIANO」

80年代に大活躍された日比野さんの段ボール作品がまとまって展示されていました。

まとめて見るのは初めてです。

たくさん落書きがされているのは段ボールの特性(?)を生かした結果でしょうか?

日比野克彦「BOEING」

日比野克彦「THE GREAT STADIUM」

日比野克彦「TELEVISION」

安保闘争後の80年代は政治色がない美術作品が特徴です。

軽薄で物足りない感じがします。

何が言いたいののか分からないというより、もはやいうべきことがないという印象です。

ディフォメされたバイクと言えば篠原有司男氏の作品が真っ先に思い浮かびます。

あちらはアメリカ文化の浸食をモンスター化したと解釈できますが、こちらはやはりメッセージを読み取るのは難しいです。

 

グルービジョンズ「チャッピー33」

次の部屋はグルービジョンズの「チャッピー33」が目立っています。

過去のコレクション展にも出品されているので、村上さんのお気に入りなのかもしれません。

このような純然たるアートではないモノも展示されているのも氏の展覧会の特徴です。

遠目には同じ女性が並んでいるようですが、髪型と装備は全員違います。

展示ごとに変えるのかもしれません。

いくらでもカスタマイズできるお手軽さこそバブル期の特徴なのかも?

 

手前から山本佳輔「Untiled」(2点とも)加藤泉「Untiled」(最奥)

巨大なキノコ?の木像は加藤泉氏の作品と思いきや、手前2点は別の人の作品でした。

「無題」というのは共通ですが・・・

加藤泉「Untiled

自立できないことで有名な加藤氏の作品。頭から増殖しててキノコ繋がり?

(手前より)BONE「クラリス(ルパン三世カリオストロの城より)」「鬼娘1 by うたたねひろゆき(CANDY TIMEより)」「ko2ちゃん 1/5原型」

現代アートを知らない人も知ってる村上氏のフィギュアコレクション。

川俣正「スリップ・イン・所沢」「ベニスビエンナーレのためのプラン」

村上氏と全くジャンルが違うと思われる川俣氏の作品も。

網羅的なのか、同世代だから集めているのか?

國方真秀未「まほ寿しお好みセット」

今回の展示で一番ツボった作品です。

遠目には寿司屋のカウンターのショーケースですが・・・

近づくと美少女、美少年のイラストが。

外国から見た日本文化のコラボレーションでしょうか?

 

ここからは陶芸コーナーです。

ごちゃごちゃと色んなものが置かれている怪しげなゾーンに突入します。

こっちのほうが村上らしい?

陶芸作家に混じって奈良美智の作品も。

展示面積の半分ぐらいがこんなコーナーです。

以前同じ会場でやった特撮博物館を思い出します。

怪しげな貼り紙もチラホラ。

小屋の中もびっしり陶芸作品が置かれています。

最後は東京の目白駅近くにある古道具坂田の再現展示です。

陶器だけでなく、古地図など古いものなら何でもといった感じです。

 

前半の展示は1970~2010年ぐらいの日本作家に絞っており、「スーパーフラットコレクション」とはある程度差別化が図られていましたが、テーマはあまり明確ではありませんでした。

後半の展示は陶芸好きなら堪らないかも知れませんが、やはり前半との結びつきはあまり感じられません。

まだまだ村上氏の研究は道半ばということでしょうか?★★

 

 

 

コメント一覧

★★★建築図鑑140「museum as it is」 – 博司のナンコレ美術体験2019年10月12日 4:29 PM / 返信

[…] 村上隆も利用するという目白の古道具坂田の店主が買い付けた小道具を展示する美術館です。 […]

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