• 日々観た展覧会や関連書籍の批評をしていきます。

★★コレクションの成り立ち「the Collection ―アートと人と、美術館」

横浜美術館横浜美術館開館30周年記念 the Collection ―アートと人と、美術館【2019年4月13日(土)~6月23日(日)】を見てきました。

淺井祐介「種を食べた獣」

横浜美術館はシュルレアリスムを中心に優れたコレクションがあり、過去の常設展でも見ごたえのある展示が多かったです。また天井が非常に高い建物なせいか、大型インスタレーションの作品が多く、常設展とは思えない大掛かりな展示が多いのも特徴です。

今回は企画展示室を含む全館でコレクション展を行うという企画です。

しかしさすがに過去に見た作品も多く、特別展の料金を払って見る価値があるかと言われると、微妙なところ。とはいえ今回もここならではの展示を含んでいたので、やはりチェックしたい展覧会です。

 

注目の作品をピックアップしてみました。

5位.今津景

今津景「Repartriation」

今津氏は今回ゲストキュレーターとして参加した4人のアーティストの一人。シュルレアリスムの作品を多く選んでいました。

本人の作風もそれに近いのですが、群像の絵画がパソコンのバグのように歪んだ独特の作風です。

過去の作家の作品と比較すると、どのように絵画が発展していったかが分かるかも?

 

4位.ジョエル・オターソン

ジョエル・オターソン「眠りの国(地獄のベッド)」

キャスターの上に布団を載せたような作品です。

壁に掛けても展示できるようで、その際は形状がアメリカ合衆国の形だとはっきり認識できます。

しかし床置だと座って休憩したくなるような形状です。

プリントされているのはアメリカの音楽バンドの写真のようです。

しかし地獄のベッドというタイトルは意味深です。うるさくて眠れそうにないのですが(笑)

 

3位.エルンスト・ハース

写真作品ですが、フォーカスの当て方が独特なのか、絵画のようにも見える作品です。

エルンスト・ハース「スルツェイ島海底火山、アイスランド島付近」

エルンスト・ハース「ニューイングランド」

エルンスト・ハース「アリゾナ」

どの作品も色を鮮烈にして、映したくないものを省略することで画面を作っているようです。

エルンスト・ハース「ハンティントン湖、ケニア」

この作品は湖から飛び立つ鳥の群れを撮っていますが、遠目には海底の不思議な植物のようにも、抽象画のようにも見えます。

 

2位.岩崎貴宏

岩崎貴宏「アウト・オブ・ディスオーダー(コスモワールド)」

非常に細かい仕事で有名な岩崎氏ですが、この作品はその中でも異色の存在。

素材は髪の毛、ほこり、布とあります。

非常にきっちりとした多作と違い、本作の観覧車とジェットコースターは激しく歪んでおり、しかも埃を冠っています。

廃墟化した遊園地の再現でしょうか?

 

岩崎貴宏「アウト・オブ・ディスオーダー(夜ノ森線)」

だが今回より印象的だったのはこちらの作品。

美術館の廊下部分に置かれた天体望遠鏡と作品のキャプション。

注意書きにはズレると見えなくなるので、慎重に見てほしい旨が書かれています。

中央の柱の天井近くに作品があります。

展示するのが大変そう・・・

 

1位.菅木志雄

菅木志雄「散境端因」

今回の展示のメインは明らかにもの派です。

美術館の横長のファザードいっぱいに展示されているのは菅氏の作品で20年ぶりの展示。

子どもが遊べるもの派の作品というのは異色です。

エントランスを挟んで左右に半分に割った丸太が連結されて置かれています。

かなり今日子に組まれていますが、それ以外には手を加えられていないようです。

菅木志雄「放囲空」

室内に展示された作品はもっと徹底しており、こちらは石を並べただけの展示です。

ちなみに壁には菅氏の師匠である斎藤義重氏の作品がかかっています。

菅木志雄「環空囲」

本展のクライマックスともいうべきインステレーションです。

立方体の展示室を跨いで、内外に正方形が連続した枠を出現させました。

展示室が立方体なら、その2つの入り口も正方形。そこに正方形の木製の枠を取り付け、それを前後左右に連続させています。

また展示室内には菅氏の新作もかかっています。

枠の中央あたりにも木の板が橋のように渡されています。

木の板が美術館の空間を引き立てるような効果を持っています。基本インステレーションが多いもの派の作品の中でも、その意図が分かりやすい作品です。

 

もの派は分かりにくい作品が多いのですが、この作品を見るだけでも本展の価値は十分あると思います。★★

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