今回は葛西臨海水族園を紹介します。
設計したのは谷口吉生氏。同じく建築家の谷口吉郎氏の息子で、日本建築界きってのエリート。どれぐらいエリートかというと、一切コンペに参加しなくても事務所が成り立つぐらい。
主な建築は豊田市美術館、東京国立博物館法隆寺宝物館など。ニューヨーク近代美術館の増築は唯一コンペに参加した例です。
普通建築家は個人宅からキャリアを始めますが、いきなり美術館から入ってるのも特殊です。
東京湾にとって葛西というのは最後に残った自然の海岸(房総半島など外湾は別ですが・・・)で、ここに自然を残す意味でも水族館を作るのは、東京都の大きな方針でした。
谷口氏の建築は広大な土地に建っていて、すごく条件がいいものが多いです。この建築も土地が広く、現在に至るまで開発は進んでいません。
アプローチもその条件を生かしたものになっています。
階段を上ってくるとガラスドーム以外に視界を遮るものがなく、海の中に入っていくかのような演出が成されています。
ちなみに谷口氏は中期以降は直線の建築ばかりになります。本建築は氏の貴重な曲線を使ったデザインにもなっています。
水族館と言えばイルカやアシカのショーが目玉ですが、ここではそういったものはなく、目玉は巨大なマグロのドーナツ水槽です。
尤も行ったときは大量死からまだ回復しておらず、寂しい状態でした。代わりに違う魚が部分的に投入されています。
もう一つの特徴が水槽のバックヤードが常に公開されていること。他の水族館もバックヤードツアーがありますが、常設はここだけではないでしょうか?
バックヤード部分にも小さい水槽があったりします。
壁を取り払った模型。上部の白いところが入り口です。真ん中にドーナツ水槽も見えます。
こうやってみるとUFOの内部みたいで楽しいです。
水族園は1989年開館ですが、1995年にレストハウス クリスタルビューが増築されました。
こちらは純粋な展望台です。
特徴としては柱らしい柱がないこと。つまり壁やカーテンウォールの方立だけで天井や床を支え、さらに横揺れからも倒壊を防いでいます。
側面も開放的です。
地下は売店や自販機があり休憩所になっていますが、上部には何もなく、純粋な展望台です。
内部も非常にシンプルです。冬に行くと中は暖かいです。
規則的な配置が気持ちがいい。
父親が日本モダニズム建築の代表だけあって、その後継を意識してるのでしょうか?
都内の水族館の中では他が過剰にエンタメ化している中、堅実な展示が魅力です。
後に過剰に保守的になる谷口氏の建築に比べると意図が非常に明確な名建築だと思います。★★★
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