映画「コヤニスカッツィ」を見ました。
監督はゴッドフリー・レッジョ、セリフがなく、音と映像のみの映画です。音楽はフィリップ・グラスが担当しています。
内容としてはドキュメンタリー映画に近いです。しかしセリフもテロップもないので映像と音楽から作者の意図を汲むしかないです。
コヤニスカッツィとはポピ族の言葉で「常軌を逸し、混乱した生活。平衡を失った世界」という意味らしいです。
映画はアメリカのグランドキャリオンなど自然の映像から始まります。
その後、パイプラインやダムなど人の営み、というか巨大インフラが登場します。
この辺りから人類の大量生産、大量消費を表す記号が大量に出てきます。
ネバタ州の原爆実験の様子。
エネルギーの大量生産と大量消費という意味では、これも上記の分類です。
海水浴場の隣にガスタンク。
印象的なシーンです。
アメリカの高速道路。J.G.バラードの小説、コンクリート・アイランドを彷彿させるシーンです。
都市の映像の多くはニューヨークで撮っています。スカイラインも現在とだいぶ変わっています。
ビルの森といった趣の映像。
廃墟と化したプルーイット・アイゴーの映像。9.11で崩壊した世界貿易センタービルも設計したミノル・ヤマサキの作品です。
プルーイット・アイゴーの映像は3分近くも使われており、中盤のクライマックスともいうべきシーン。
次々とダイナマイトで解体されるプルーイット・アイゴー。一種のカタルシスを感じるシーンです。
ミノル・ヤマサキを批判する際に用いられる有名な映画作品だけに、印象的に撮られています。
プルーイット・アイゴー以上の高層ビルの爆破解体のシーンもあるのですが、前者ほどのインパクトはありません。
その次が最も長いシークエンスで、都市生活者の映像がひたすら流れます。
中にはグランドセントラル駅の映像も。
映像はすべて早回しで、都市生活の慌ただしい生活を視覚化してます。
サラリーマンの出勤や、工場の大量生産の映像などが多用されていますが、中にはこんなカットも。
映像や情報も大量に生産され、消費されるという意味でしょうか?
ラストはアメリカの宇宙ロケット打ち上げ失敗映像です。
この映像は冒頭でも使われており、映画がループする仕掛けです。
この映画はアメリカ現代社会を批判する意図で作られたと思われますが、映像としてはニューヨークやアメリカのスケールの大きさに圧倒され、エンタメ作品として意外とよくできています。映像と完全に一体化した音楽も特徴で、コンサートに来てるような気分にもなれます。★★