• 日々観た展覧会や関連書籍の批評をしていきます。

日常との突然の別れ★「トーマス・ドイル “HOLD YOUR FIRE”」

DIESEL ART GALLERY(渋谷)の「トーマス・ドイル “HOLD YOUR FIRE”」【2018年11月23日(金)から2019年2月13日(水)】を見てきました。

ファッションブランドDIESELのショップに併設されたギャラリーです。

日本で初めて紹介されるトーマス・ドイル氏はミニチュアアート作家。

日本ではこの手の作家は事欠かず日本の専売特許と思ってましたが、海外にもいたんですね。

国内作家との違いはそのメッセージ性。日本では面白さや技術の細かさ、美しさが強調されますが、西洋ではどんな意味を込めるのかが重要視されます。

展覧会タイトルの“HOLD YOUR FIRE”とは疑いようのない不安感という意味らしくです。平和な日常から戦争、災害、経済的破綻、病気などにより一気にどん底に叩き落される現代社会の不安感をミニチュアに込めています。

“HOLD YOUR FIRE”

また作品には個人住宅が登場することが多いです。この家はドイル氏自身の持ち家をモデルにしているのだとか。

家とは安心、安定の象徴であり、それが損なわれる可能性に言及することにより不安感を増幅させています。

トーマス・ドイル ​「Proxy(28 Sapper Ave.」

例えばこちらの作品。家の前では子供たちが遊んでいますが・・・

その足元では塹壕戦を展開中。

島国の日本では持ちえない感覚です。

トーマス・ドイル ​「Proxy(45 Catherine Ct.」

こちらの作品は少女たちが家の前を横切っていますが・・・

実は家はハリボテで、軍の秘密作戦が展開中という仕掛け。

情報化が進む一方でますます不透明感を増す社会の不安を物語っています。

 

トーマス・ドイル ​「Mire」

今回最大の作品です。

「Mire」とは泥のことであり、家が突然沈み込むSF的状況を示しています。

帰宅しようとしていた家主が立ち尽くす感じがよく表れています。

なぜ上にさらに同じ家が2つあるのかはナゾですが・・・

 

他にも無意味なプラカードを掲げる人物の作品など、小品も充実してました。

 

現代社会の不安感を暴き出す作品群はまだまだたくさんあるようなので、いずれもっと大きな会場で紹介してほしいところです。★

 

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