高崎市美術館(群馬県高崎市)の「生誕110年 人、鶴岡政男」【平成30年2月10日(土曜)~3月25日(日曜)】を見てきました。
鶴岡政男(1907-1979)は戦前、戦後に活躍した画家。戦中も戦争画を描かず、代表作としては戦後発表された「重い手」があります。今回は出品されていませんが、東京都現代美術館でよく展示されてますね。
本作のような人体を改造したような作品は多く書かれており、鶴岡さんにとって人間というは生涯のテーマであったようです。
展覧会タイトルに「人」とついているように、「飯のために絵は描かない」といって、生涯生活と密着した画業を志した鶴岡さんの人柄を伝える展覧会になっています。
展示の始めでは鶴岡さんと戦前から交流のあった芸術家の作品に加えて、生活のために作った陶器や、家計の足しにするためにやった釣りを題材にした作品が展示されています。特に釣りは家族のレジャーになるとともに、釣竿を自作するなどかなり本格的なものだったようです。
また奥さんと3人の娘さんも鶴岡さんの画業に大きな影響を及ぼしています。特に上記のような男女の二重像は多く制作されており、奥さんのことは多く画題になっています。自宅は2畳、2畳、3畳の3間しかなかったそうで、絵は昼間居間として使っていた2畳間を夜間だけ使って描いていたそうです。鶴岡さんの画業は家族に必ずしも歓迎されなかったようで、作品にもそれが表れている気がします。
また抽象的な作品も面白いです。本作は旅先の山で出会った女学生が後に自殺したことを受けて制作されたようです。ここでも月が二重映しに描かれています。また鶴岡さんは自己の深層をそのまま絵にするためにテレビで「LSDを服用して絵を描く」という試みも行っており、本作はその影響も感じます。
代表作「ゴルフ」などはその元になったパステル画が展示されていました。スペースの関係か、このようなケースは何点かありました。
ちなみに「ゴルフ」は美術館の窓にもシールが貼られてます。
鶴岡さんはもらい子であるらしく、本当の両親が誰かもわからないそうです。そのような複雑なメンタリティが影響してか、名台詞や珍エピソードには事欠きません。その辺りをフォローした展示も多く楽しめました。ただ代表作が結構欠けてるのは残念です。★★
★★抽象表現のあれこれ「抽象の悦び」 – 博司のナンコレ美術体験2018年5月23日 6:55 AM /
[…] 今回の出品作の中で一番具象的です。鶴岡さんの作品は非常に見て楽しい作品が多く、本作も制作年が1957年ということで米軍に対する批判も読み取れますが、それよりヘルメットをかぶった兵士?のユーモラスさが強調されています。 […]