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建築図鑑127★★伊丹監督も認めた複雑系「ヤマトインターナショナル」

東京都大田区のヤマトインターナショナルを見てきました。

設計は原広司氏。

建物が立つ大田区の平和島は物流倉庫が多く建つ土地。この建物の隣も倉庫ですが、明らかに浮いています。

アパレルメーカー、ヤマトインターナショナルの本社ビルです。

映画「マルサの女2」より

この建物は伊丹十三監督の映画「マルサの女2」で国税局の庁舎として登場しました。

映画「マルサの女2」より

映画「マルサの女2」より。中央が主演の宮本信子

もっとも映るのは建物の外観がワンカット、あとは出勤シーンにエントランスが使われるのみです。

内部が映っていると思われるシーンもなくないですが、原氏のデザインや本建築の特徴が生かされるようなシーンは絶無です。

これくらいなら一般人でも入れる。どうせなら建物内部を使ってほしかったところです。

伊丹監督がこの建物を国税局として使った意図は謎ですが、想像するに国税局は秘密が多いので、建物も謎めいたものにしたかったというところでしょうか?

建物は反対側(南側)から見ると非常に平面的。

ところが表側(北側)は非常に起伏に富んだデザインをしています。

細長い土地なので、いっそ片面だけでも個性的な建築にしようとする意図があったのかもしれません。

原氏といえば著書「集落の教え」が有名です。

この研究結果をもとに設計をしているというのが原氏の弁ですが、より巨大な梅田スカイビル京都駅より、本建築にその発想が現れている気がします。

原氏のデザインは一言でいえば繰り返しをなくすということです。

あらゆるデザインをもつ都市を単一の建物内に埋め込むことで、巨大な建築も多様性に富んだ楽しい建物になるという発想です。

それが伺えるのが、エントランス前の摺りガラスの模様。

雑誌の写真によると内部もこのようなパターンが続いており、外観と合わせて非常に福財津な空間になっているようです。

この建物は1986年竣工ですが、その後1988年に飯田市美術博物館、1993年に梅田スカイビル、1996年に京都駅と原氏の建物は飛躍的に拡大していきます。

そのジャンプ台になった重要な建物であり、デザインからも原氏会心の作品であることが伺えます。★★

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