今回は大阪梅田駅前の梅田スカイビルに注目したいと思います。
設計は原広司さん。代表作は他に
など。
ビルの谷間から見えてるところ。20年たった今も付近の建物と比べて、圧倒的に未来を感じます。
原さんはスカイビルはあっという間に高さ的には埋もれてしまうと言ってましたが、大阪の経済的衰退のせいで、今の大阪のスカイラインを形成します。あべのハルカスが最近抜いたぐらいです。
最大の特徴であるビルの連結を真下から見たところ。連結によって
というメリットがあるとのこと。
まず➀ですが、これは原さんだけでなく、構造家の木村俊彦さんも言っていること。ただし、それなら2棟にするのではなく1棟にした方が確実だし、また2棟の向かい合う面のカーテンウォールのガラスの費用も節約できます(これを実現したのが六本木ヒルズです)。これについては相談役を務めた大阪の有力者・安藤忠雄さんが「そんなことしたらオモロくない」と後押ししたらしいです。
また②ですが、こんな大穴があいているところをバタバタ逃げるのはぞっとしない。穴はないほうが避難にも、強度的にもいいはずです。
これについては原さん自身が答えています。穴が開いているのは屋上から見下ろすためではなく、足元の広場が影にならないようにするためとのことです。ミノルヤマサキが言った通り、高層ビルは建物そのものと同じくらい足元の空間をどうするかによって出来が決まります。
足元に抽象彫刻や威圧的な西洋彫刻ではなく、カラフルな街灯を置いたのも原さんらしく、この建物が親しまれる要因になっています。
足元は造園家の吉村元男さんがデザインしており、日本庭園もあります。また安藤忠雄さんがグリーンウォールを作ったり、地下に昭和の街を再現したショップ群があったり、観光地化が今も進んでいるようです。
もちろんビルから斜めにエスカレーターで屋上に向かう演出のために大穴が開けられたことも大きいと思います。このエスカレーターは本来斜行エレベーターにしたかったそうで、実現していれば本建築の遊園地化はさらに進行したと思います。
また空中庭園の1つ下のスペースでは原さんの描いた未来建築像が展示されています。
それはこの梅田スカイビルが何段も重なり宇宙に至るというもので、その意味でも上下方向の視界を確保する大穴は必要だったのでしょう。
エレベーターで登っているところです。途中までは外が見えず、地上から一気に非日常空間に引き上げられる演出がされています。
ミノルヤマサキは高層ビルはてっぺんと足元以外デザインする余地がないといいましたが、本建築は全てが見事にデザインされています。
全体として建物が消失し、空中庭園だけ浮かんでいるようなイメージで設計されています。
建物の上部が雲のような形をしているのもそのためです。
また原さんは連結の理由として労働と遊びの空間を融合させたかったとも話しています。これは前述の昭和再現のショップなどを見ても、高度に実現されていると思います。
エントランスホールやエレベーターホールも細部までデザインされています。
エントランスのアートまで川俣正さんの梅田スカイビルです。
模型もカッコイイ!建物全体が原広司ミュージアムです。
一方、建物のデザインや斜行エレベーター、空中庭園、連結という手法は時期が重なる京都駅ビルにも見られます。あちらも大変な傑作ではありますが、同じような大作を2つも作ってしまったことは原さんの作品がパターン化してしまうことにも繋がっており、少々残念ではあります。彼のその後の作品もこのスカイビルを超えるものはないと思います。
外観、内観も素晴らしく、中銀カプセルタワービルと並んで、世界中回っても日本にしかない傑作建築だと思います。★★★
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