• 日々観た展覧会や関連書籍の批評をしていきます。

★★★建築図鑑35圧倒的未来感「梅田スカイビル」

今回は大阪梅田駅前の梅田スカイビルに注目したいと思います。

設計は原広司さん。代表作は他に

など。

 

ビルの谷間から見えてるところ。20年たった今も付近の建物と比べて、圧倒的に未来を感じます。

原さんはスカイビルはあっという間に高さ的には埋もれてしまうと言ってましたが、大阪の経済的衰退のせいで、今の大阪のスカイラインを形成します。あべのハルカスが最近抜いたぐらいです。

最大の特徴であるビルの連結を真下から見たところ。連結によって

➀構造的に強度が得られる

②映画「タワーリング・インフェルノ」みたいになった時も上から隣の塔に逃げれる

というメリットがあるとのこと。

 

まず➀ですが、これは原さんだけでなく、構造家の木村俊彦さんも言っていること。ただし、それなら2棟にするのではなく1棟にした方が確実だし、また2棟の向かい合う面のカーテンウォールのガラスの費用も節約できます(これを実現したのが六本木ヒルズです)。これについては相談役を務めた大阪の有力者・安藤忠雄さんが「そんなことしたらオモロくない」と後押ししたらしいです。

 

また②ですが、こんな大穴があいているところをバタバタ逃げるのはぞっとしない。穴はないほうが避難にも、強度的にもいいはずです。

これについては原さん自身が答えています。穴が開いているのは屋上から見下ろすためではなく、足元の広場が影にならないようにするためとのことです。ミノルヤマサキが言った通り、高層ビルは建物そのものと同じくらい足元の空間をどうするかによって出来が決まります

足元に抽象彫刻や威圧的な西洋彫刻ではなく、カラフルな街灯を置いたのも原さんらしく、この建物が親しまれる要因になっています。

 

(建築リフレより)

足元は造園家の吉村元男さんがデザインしており、日本庭園もあります。また安藤忠雄さんがグリーンウォールを作ったり、地下に昭和の街を再現したショップ群があったり、観光地化が今も進んでいるようです。

もちろんビルから斜めにエスカレーターで屋上に向かう演出のために大穴が開けられたことも大きいと思います。このエスカレーターは本来斜行エレベーターにしたかったそうで、実現していれば本建築の遊園地化はさらに進行したと思います。

また空中庭園の1つ下のスペースでは原さんの描いた未来建築像が展示されています。

それはこの梅田スカイビルが何段も重なり宇宙に至るというもので、その意味でも上下方向の視界を確保する大穴は必要だったのでしょう。

 

エレベーターで登っているところです。途中までは外が見えず、地上から一気に非日常空間に引き上げられる演出がされています。

(建築リフレより)

ミノルヤマサキは高層ビルはてっぺんと足元以外デザインする余地がないといいましたが、本建築は全てが見事にデザインされています。

(建築リフレより)

全体として建物が消失し、空中庭園だけ浮かんでいるようなイメージで設計されています。

建物の上部が雲のような形をしているのもそのためです。

また原さんは連結の理由として労働と遊びの空間を融合させたかったとも話しています。これは前述の昭和再現のショップなどを見ても、高度に実現されていると思います。

エントランスホールやエレベーターホールも細部までデザインされています。

エントランスのアートまで川俣正さんの梅田スカイビルです。

模型もカッコイイ!建物全体が原広司ミュージアムです。

一方、建物のデザインや斜行エレベーター、空中庭園、連結という手法は時期が重なる京都駅ビルにも見られます。あちらも大変な傑作ではありますが、同じような大作を2つも作ってしまったことは原さんの作品がパターン化してしまうことにも繋がっており、少々残念ではあります。彼のその後の作品もこのスカイビルを超えるものはないと思います。

 

外観、内観も素晴らしく、中銀カプセルタワービルと並んで、世界中回っても日本にしかない傑作建築だと思います。★★★

 

 

コメント一覧

オススメスポットベスト10 – 博司のナンコレ美術体験2018年4月22日 11:12 PM / 返信

[…] 5位.梅田スカイビル(大阪府) […]

建築図鑑75★★「大阪国際会議場」 – 博司のナンコレ美術体験2019年1月16日 8:59 AM / 返信

[…] 最上階からの眺め。遠くに梅田スカイビルが見えます。 […]

★★建築図鑑94集落の多様さ「つくば市立竹園西小学校」 – 博司のナンコレ美術体験2019年2月18日 8:12 AM / 返信

[…] 梅田スカイビル、京都駅など巨大建築の設計に定評のある原氏ですが、小さな作品も沢山作っています。 […]

死ぬまでに見たい100の建築 – 博司のナンコレ美術体験2019年6月8日 8:50 AM / 返信

[…] (済)梅田スカイビル(大阪府・梅田)【原広司】 […]

建築図鑑134★★「埼玉県立大学」 – 博司のナンコレ美術体験2019年6月11日 7:19 AM / 返信

[…] 黒川紀章氏(クアラルンプール国際空港)、ノーマン・フォスター氏(北京国際空港)、レンゾ・ピアノ氏(関西国際空港)、原広司氏(梅田スカイビル)などは皆このプラグラム建築の名手です。 […]

★★★建築図鑑144赤いと3倍?「ヘップファイブ」 – 博司のナンコレ美術体験2020年1月13日 3:19 PM / 返信

[…] 観覧車より見た大阪駅。ちなみに梅田スカイビルは駅ビルを挟んで反対側のせいか、見えません。 […]

建築図鑑203★★宮城県図書館 – 博司のナンコレ美術体験2021年6月5日 10:43 AM / 返信

[…] 京都駅やヤマトインターナショナル、梅田スカイビルに比べると派手さはないですが、スペーシーな建築と自然との融合は都会の原建築では見れない良さでした。★★ var quads_screen_width = document.body.clientWidth; if ( quads_screen_width >= 1140 ) {document.write(''); (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); }if ( quads_screen_width >= 1024 && quads_screen_width < 1140 ) {document.write(''); (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); }if ( quads_screen_width >= 768 && quads_screen_width < 1024 ) {document.write(''); (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); }if ( quads_screen_width < 768 ) {document.write(''); (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); } […]

建築図鑑126★改修して未来感をなくす「市営基町高層アパート」 – 博司のナンコレ美術体験2023年1月3日 8:52 PM / 返信

[…] ちなみに道路向かいは原広司氏設計の市立基町高等学校です。 […]

コメントを残す