広島市の市営基町高層アパートを見てきました。
設計は大高正人氏。
大高氏はメタボリズム運動に参加したメンバーですが、黒川紀章氏、菊竹清訓氏など他の建築家に較べると知名度はイマイチ。しかしその庶民目線の設計は玄人受けはよく、特に集合住宅、さらに都市計画では様々な実績を残しました。
建物の建つ基町は広島城の西で超一等地ですが、もともと原爆投下の後にできたスラム街があり、住宅の大規模改良も兼ねていました。
また約3000戸もの住宅を一挙に建設する計画は当時の日本にはなく、未知への挑戦でもありました。
建築ファンとしての見どころは段違いになったアパートの屋上が全部つながっており、屋上公園になっている点です。
が、この公園はかなり初期に風されたらしく、現在もエレベーターのボタンこそありますが、屋上に上がることはできません。
一階部分はすべてピロティになっており、住戸はありません。
むき出しの配管が時代を感じさせます。
スキップフロアになっているためか、古い設計のせいか共用部分にはかなり余裕があります。
エレベーター棟が完全に独立した柱になっているのも珍しいです。
数年前に外壁が改修され、見違えるほどきれいになりました。
ただ、長く使う上で補修が必要なのは当然ですが、一気に通常の高層マンションっぽい外観になってしまったのは残念です。
空中庭園と並んで特徴的なのが中央の商店街。
アパートに囲まれた中央部分は地下が駐車場と商店街、2階が公園になっています。
ここが商店街の中心であり、高層アパート全体から見てもど真ん中。何にもないのは少々寂しいです。
流石にシャッターが目立ちますが、この手の商店街にしたらまだ店は開いている方です。
古くからの喫茶店が生き残っている一方、アジア系の住民向けの店も増えてました。
商店街の上の公園。草が生え放題であまり使われている様子はありませんでした。
そのためか、猫がめっちゃ寛いでました。
商店街の貼り紙。これだけ大きいアパートなので、自宅で色々イベントを開く人も多いみたいです。
公園の下の駐車場。歩車分離の徹底はむしろ現代建築より進んでいるかも。
敷地内には幼稚園、小学校、消防署、交番などが含まれ、まさに一つの街を形成しています。
ちなみに道路向かいは原広司氏設計の市立基町高等学校です。
今見ても十分未来的な設計なのですが、屋上が封鎖されている点、公園や商店街が活用しきれてない点、安易な回収がされてしまった点など十分ポテンシャルが生かせてない部分が目立ちました。★