今回は江戸東京博物館に注目してみたいと思います。
設計は菊竹清則氏。川崎市民ミュージアムに続いて2回目の登場です。
場所は両国駅前、国技館の隣です。
この建築は東京国際フォーラム、東京ビックサイト、東京都現代美術館とともに4大ムダ建築といわれた建物です。その要因は巨大さ、茫洋としたデザイン、ムダに持ち上がった建物といったところでしょうか。
特にデザインに関してはかつて斬新な構造と軽やかなデザインで世の建築家を魅了してきた菊竹氏からすると隔世の感があります。またその巨大さについても江戸城と同じ62mの高さという理由付けがされましたが、このデザインではそれも説得力がありません。
しかし実はこの巨大なピロティを持った構造、ちゃんと立派な意味があるのです。
配置計画は一階がミュージアムショップと企画展示室、3階がピロティ、4、5階が常設展示室となっています。
企画展示室と常設展示室をピロティでサンドイッチすることで、アプローチを分散し、混雑を避けることができます。
また3階にスーパーストラクチャーと収蔵庫、機械室を集中配備することでその上の展示空間をフラットな巨大空間にでき、大規模な展示替えが容易になります。しかも空調も3階からの吹き出しなので効率的です。斜面になっている屋根は全面ガラス張りで、全開にすると自然光を入れることができます。
また収蔵庫を持ち上げるのは災害から文化財を守る意味もあります。両国は下町。江戸の下町といえば火事です。この墨田川付近は江戸期に大火事で何万人もの人が焼け死んだ歴史もあります。
いざとなればピロティと巨大な展示室は避難場所として活用できる。出身地の久留米で何度も洪水を経験している菊竹氏はデザインを捨てて敢えて巨大なピロティと空中展示室を作ったのだと考えられます。
ところで展示計画については、菊竹氏の設計が役立ち、かなり自由度の高い展示が行われているようです。
3階の空間構成は、やはりJR中央線からも見える真っ赤な巨大なエスカレーターがかっこいいです。
手前のエレベーターも上部は緑に塗られています。この辺りの色彩計画も田中一光氏が担当しているのかも。
だだっ広い空間でしたが、のちに無料休憩所が増設されました。
両国駅からすぐのわりにはいつも空いていて穴場です。
またピロティのエスカレーターなど色彩計画は田中一光氏、
床のパターンは粟津潔氏が、
一階ホールの天井は多田美波氏が担当しています。
この豪華な顔ぶれから行って外観ではそうと見えなくても細部では江戸へのこだわりは相当あったようです。
ところでこの建物、計画では隅田川から掘割で遊覧船を通し、川からアプローチする拡張計画もあるようです。もし実現すれば博物館を越えて巨大江戸アミューズメントパークが実現することになります。数々の拡張性を秘めたこの博物館、菊竹氏の最初期の名作、スカイハウスの大規模化にも見えてきます。もしそうだとすると、スカイハウス同様、3階下に無数のカプセルを吊り下げて全く新しい施設に改造することも可能です。外観に反して、建築家の妄想を駆り立てる、可能性に溢れた建築です。ナンコレ度★★
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