国立近現代建築資料館(湯島)の紙の上の建築 日本の建築ドローイング1970s – 1990s(2017.10.31[火]-2018.2.4[日])を見てきました。
入場無料とありますが、土日祝日は岩崎邸(上野公園側)を経由して入る必要があるので実質400円です。ただカタログが無料でもらえるし、割高感はないです。
これまで国立近現代建築資料館は坂倉順三、吉阪隆正、大高正人と堅実な建築家を紹介してきましたが、今回は建築家のドローイングがテーマ。建とうが建つまいが自由に描いてみました、という作品ばかりなので、よく言えば自由な発想、悪く言えば建築界の問題児揃いの展覧会になりそうです。
実際、入り口の正面に置かれたのは鬼才、渡邊洋治の「嶺崎医院」。期待を裏切らない構成です。竜がとぐろを巻いた形態という病院と何の関係もない完全に趣味の世界。
渡邊さんといえば山手線からも一瞬見える第3スカイビル(通称・軍艦マンション)が有名です。
どうも学芸員さんは建築ドローイングを設計図以外全部と解釈したようです。なので磯崎新さんのコンセプトを表すとした実物とは全然違うシルクスクリーンや、
象設計集団の謎のイラスト?など何でもありです。
原広司さんの妄想建築なども楽しいのですが・・・
ドローイング展で俄然存在感を発揮するのは高松伸さんです。
この建物は本体は全部地下に埋まってて、見えてるのは単なるカザリ。なのにこの自己主張の激しさ。安藤さんの地中美術館とえらい違いです。
高松さんといえば、もはや映画「ブラックレイン」の中でしか見れない「キリンプラザ大阪」が代表作。
山陰出身の方で、意外と交通の便がいいところに作品がなく、僕も見た建築はナンバヒップスぐらいです。今は稼働してませんが、建物にフリーフォールが張り付いてます。
高松さんは外見ばかりで使いにくい建築で有名ですが、この鉛筆画は職人芸です。高松さんの特徴であるメタリックで陰影の濃い建物を鉛筆の濃淡だけで表しています。自ら時計職人と称した高松さんの面目躍如です。
今回の展示のクライマックスは毛綱毅曠さん。この作品は自作をいろんな角度から見た図ですが、
難解な哲学や思想に基づいて設計を行った彼らしく、その絵も複雑な思想が読み取れます。
釧路出身の建築家で、北海道未上陸の僕は実際に見たのは、
能登島ガラス美術館と、
玉名市立博物館だけです。しかしどちらも氏が大変ユニークな発想の持ち主であることだけは分かりました。
ガラス美術館は風水に基づいて各建物が位置決めされています。玉名市博物館は列柱内に地元の特産物や言い伝えを展示し、円形の建物の中心では太鼓橋の上から床の映像を見るという趣向です。しかしどちらの建物も毛綱さんがメインと考えていた空間が閉鎖されており、如何に使いこなすのが難しいかが分かります。
上記の絵はまだまだ建物を実際に描いているだけわかりやすいです。こちらの作品は毛綱事務所の3つの部屋を描いたもの。完全に異界化してますね。
ついに現実世界から完全に解脱してしまいました。
撮影禁止でしたが、東京国際フォーラムの設計競技では何故かアメコミ風の芸者などが登場するコンペ資料を発表してました。
このような何でもアリな彼が60歳で亡くなってしまったことは残念です。もっとも生きていても隈研吾さんみたいになってた可能性もありますが。
スペースの割に濃い展示の多い建築資料館ですが、今回は特に既存の価値観を揺さぶられる展示でした。ナンコレ度★★
★★★建築図鑑⑫最果ての宇宙船発着場「石川県能登島ガラス美術館」 – 博司のナンコレ美術体験2018年1月2日 1:53 AM /
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