森美術館(六本木)のレアンドロ・エルリッヒ展:見ることのリアル【2017.11.18(土)~ 2018.4.1(日)】を見てきました。
アートフロントギャラリー(代官山)でも個展を開催していますが、金沢21世紀美術館の「スイミングプール」で有名な作家の個展です。
始めに見れる作品は真っ暗な部屋で水面に浮いているカラフルなボート。
実際には通常のボートの底に、水面の反射で歪んでいるかのような形のボートを貼り付けているだけです。仕掛けは単純ですが、オールなど小道具も同じく歪めているし、光やボートの揺れなども完全に制御しないとできない芸当です。ここまで徹底しただますことへの情熱は寺山修司を思い出します。
箱の両側にまったく同じ扉が付いており、のぞき穴を覗くとこれまた全く同じマンションの共用廊下が見えます。金沢21世紀美術館の8年前の1996年の作品であり、大規模作品が作れるようになる前も一貫して同じテーマを追求していたことが分かります。
祖国アルゼンチンの首都、ブエノスアイレスでの作品です。町の象徴のオベリスクにキャップをして、足元に先端部を再現した小部屋を置いた作品。中に入って屋上からの眺め(カメラの映像)を楽しむこともできます。単純ですが大規模な仕掛けで、オベリスクの先端が切り取られたかのような錯覚を起こします。
手前の空間にいる観客がガラスの向こうの廃墟化した教室で授業を受けているかのように見えるハイテク作品。この教室は日本っぽい作りですが、おそらく実際は万国共通なのでしょう。このように世界共通の光景を題材にした作品が多いのも特徴です。
ブラインド越しに隣人の私生活を覗き見る、という体験ができる作品。アイデアだけでなく作品としてもカラフルで美しいものです。
町中の防犯カメラを皮肉った作品。何も起きない部屋に25台の防犯カメラ。しかもアングルもほぼ同じ。こちらも見た目にかっこいい作品ですね。画角がちょっとずつずれているのが絶妙です。
今回最大の作品である試着室迷路。律儀にカーテンと椅子が全部屋にあるのがなんだか笑えます。
こちらも同じようなアイデア。やはり無国籍流のデザインが特徴です。
今回実物がない作品も模型で紹介されていました。
だまし絵的体験ができ、インスタ映えもする今どきの展覧会ですが、大規模な作品に鏡を使ったものが多い点など、パターン化が見れたのはやや危険に感じます。アイデア勝負の作家なので、今後もビックリの作品が作れるかは未だ不透明です。
むしろ動画を使った小、中規模作品の方が作者の心情をよく伝えている気がして好感を持ちました。派手な作品に目が行きがちですが、初期の作品も見れるエルリッヒ回顧展としても貴重な機会です。
2017.11.18(土)~ 2018.4.1(日)
会期中無休
開館時間10:00~22:00(最終入館 21:30)
※火曜日のみ、17:00まで(最終入館 16:30)
会場森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
★子供騙しと侮るなかれ「〈方丈記私記〉~建築家とアーティストによる四畳半の宇宙」 – 博司のナンコレ美術体験2018年8月27日 11:15 PM /
[…] これらの作品とは別に、中央の水盆ではレンドロ・エルリッヒが水底に絵を描いた作品を出品しています。 […]