• 日々観た展覧会や関連書籍の批評をしていきます。

あえてラッセン展を観にいく

新宿アイランド(新宿)の「クリスチャン・ラッセン原画展」【2018.2/8-2/12】に行ってきました。

クリスチャン・ラッセンといえば90年代のバブル末期において大ブームを引き起こした芸術家です。一方詐欺まがいの強引な商法はエウリアンなる言葉も生み出し、従来のアートファンからは嫌悪された存在でもありました。

 

そんなラッセンですが、未だに日本では購入する人がいるようで、デパートの絵画コーナーにも作品が置かれています。電車内の広告でも頻繁に展覧会が通知されています。今回は敢えて今日のラッセンを見に行ってみました。

 

場所は新宿アイランドの地下1階。地下街直結でアクセスは悪くありませんが、純然たるビジネス街で周囲には画廊はおろか観光名所もろくにありません。

 

展示は初めに60年からの画業を紹介した後、メインの版画コーナーに移ります。

(来場予約特典パンフレットより)クリスチャン・ラッセン「ハワイアン・ナイト」

作品の特徴としては海、特に波がほぼすべての作品に描かれていることです。

(来場予約特典パンフレットより)クリスチャン・ラッセン「タイガームーン」

イルカが描かれていない絵は結構ありますが、波が描かれていない作品はほぼなく、初期の作品から、陸の生き物の絵にまで波が描かれています。実際波の表現は精緻かつ多様で非常に優れていると感じました。サーファーとして波こそラッセンが本当に描きたかったものなのでしょう。

(来場予約特典パンフレットより)

会場でもラッセンのサーファーとして、また慈善活動家としての顔を紹介していました。

(来場予約特典パンフレットより)クリスチャン・ラッセン「バランス・オブ・ライフ」

作品は非常に美しいのですが、会場を一周するうちに早々飽きてしまいました。作風はリアルな描写を心掛けるスーパーリアルともし、ヤン・フードンのような作り物っぽさを強調するものとも違います。あくまでラッセンの理想化されたイメージの産物であり、そのキラキラが長い画業の間全く変化しないことが退屈な原因と感じました。

客の入りは土曜の午前中で10人程度で、電車内で広告を行った割には寂しいものでした。噂のエウリアンも健在ですが、かつてのような強引な販売はなかったです。とはいえ客の体に触るなどなれなれしい態度はたとえ悪意がないにせよ芸術を楽しむ空間では異質に感じました。

 

会場は何度も使いまわしたのであろうボロボロの間仕切りに作品が架けれており、絵に対するリスペクトを感じません。会場全体が作りが安っぽく、ここが普通の画廊とは違うことを強調するようです。至る所に支払いの分割例が掲げられているのも邪魔です。ちなみに価格は小品で50万、大きな作品で100万ほどです。

全体としては噂ほどでないにせよ、違和感は拭い去れません。慈善事業も協定で儲けた金で慈善活動をした笹川良一のようないかがわしさを感じます。とはいえ、同系列のインテリアアートの中でラッセンの技量が抜群に優れているのも事実で、真っ当な美術館や画廊で飾られればまた違った感想も浮かぶかもしれません。

コメント一覧

作品はいいのに損した気分になるわけ 変わる廃墟展 2018 – 博司のナンコレ美術体験2018年3月7日 9:58 PM / 返信

[…] このような会場構成はクリスチャン・ラッセン展を髣髴させます。一般の日本人はほとんど絵を買う習慣がないので、このように作品も会場を安く作って、入場料とグッズ販売で儲けるというスタイルのほうが安定するのかもしれません。 […]

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