今日は六本木の国立新美術館に注目してみたいと思います。
設計は黒川紀章氏。国立新美術館は最晩年の一作です。
黒川氏の設計した美術館は埼玉県立近代美術館、広島市現代美術館、名古屋市美術館などがあります。
どの建物も共通の特徴としては外観は周囲の自然と一体化させるためそれなりに入り組んでますが、展示室は規格のしやすさを考えてハコ型のいわゆるホワイトキューブが多いことです。
国立新美術館でもこの特徴は引き継がれていて、巨大なホワイトキューブが3階に渡って作られており、企画展を同時に10本することも可能です。特に2階の企画展示室は天井も高く、巨大な現代アートの展示に最適です。
この巨大な展示室を実現した秘密がスーパードミノというシステム。エスカレーターに乗ると異様に回数間の床が分厚いことが分かりますが、ここに空調など建物維持に必要な機械類が詰め込まれ、中も歩けるぐらいの高さがあります。
これによってのも➀客の利用階の面積を上げ、②建物インフラのメンテナンス効率を上げ、③いざという時は機械類をまるごと交換するのも簡単というメリットを持ちます。
黒川氏はこのスーパードミノを大阪府立国際会議場(愛称はグランキューブ大阪)で初めて試み、ここ国立新美術館でも再び用いました。
機能上のもう一つの特徴は公募展の際の効率性。写真奥の搬入口から持ち込まれた作品は審査され、受かればそのまま奥の展示会場へ。落ちればそのままお引き取り。展覧会の撤収時も高速化されており、複数の展覧会を常に同時にやる美術館に求められる機能を見事に満たしています。
このように国立新美術館は公募展+企画展を行い、収蔵品による常設展がありません。このような施設は海外ではアートセンターと呼ばれ、現に英名はThe National Art Center, Tokyoです。公募展の主催者の反発を招いたので和名のみ美術館となっています。
機能が巨大貸画廊になってしまったため、デザインの見せ場はファザードが中心になります。エントランスは車寄せが付いていますが、利用されているのを見たことはありません。巨大な日よけは機能的なものを好む黒川氏らしい設計です。
入口の円錐に赤リングは中期以降の黒川氏のトレードマーク。表参道の看護協会ビルにもあります。
特徴的なうねるガラスは元から当地にあった東京大学生産技術研究所と木々の位置関係から形状が決定されたようです。また2階から上のレベルは逆円錐型のレストラン、カフェの位置が一番膨らんでいます。
機能性ばかりを強調し褒められることの少ない黒川氏のデザインですが、このファザード空間はいつも人が多く、利用率は極めて高いです。
地下のショップ、レストランもいつも人が多いです。
なにげにいろんな形の名作椅子が置かれてるのも特徴ですね。
場所がいいとはいえ、アーティストとのコラボも多いです。他の国立美術館では考えられないことで、黒川氏の長年の主張である「共生」が思わぬ形で実現しました。★★★
★★★教育とエンタメの両立 建築図鑑51「福井県立恐竜博物館」 – 博司のナンコレ美術体験2018年8月9日 10:54 PM /
[…] エントランス部分の形状が国立新美術館に非常に似ていますね。 […]