• 日々観た展覧会や関連書籍の批評をしていきます。

★★スケールを巡る幻想「縮小/拡大する美術 センス・オブ・スケール展」

横須賀美術館「縮小/拡大する美術 センス・オブ・スケール展」【2019年4月13日(土)~6月23日(日)】を見てきました。

 

スケールというと拡大・縮小を扱うのかと思いましたが、実際にはほとんどが縮小で、中でもミニチュアアートが印象的でした。

1フロアだけの小規模な展覧会でしたが、思った以上にスター級のアーティスト作品が集まっていました。

有名でも意外と見る機会のない作品も多く出品されていました。特に注目すべき作品を列挙してみます。

 

 

6位.平町公

平町公「京浜工業地帯の掟 磯子・横須賀隆起図」

やはり神奈川県といえば海岸です。実際には箱根など山も多いのですが、湘南、江の島、横須賀、横浜港と海の観光地には事欠きません。

その上工業地帯も多く持っています。絵はキャンバスに描かれていますが、そのまま壁に貼られています。

航空写真を活用して描いたとのことですが、黄色く塗られた道路上の車の描写はここでもスケール・オブ・ワンダー

画の左のほうでは何故か大根が宙を舞っています。作者の個人的思い入れでしょうか?

八百万の神を思い浮かべます。

左端で絶壁場を取材(?)するのは作者自身?やっぱりワンダーです。

 

 

5位.高橋勝美

高橋 勝美「青森の朝市」

ミニチュア作家の中で一番ストレートな表現でした。

流行りの現代美術ではなく、非常に土着的な表現が目立ちます。

アートというより模型って感じです。

高橋 勝美「青森の朝市」

この朝市は色んな店が並んでいます。

非常に細かいのですが、それより生活臭がしみ込んだ再現が面白いです。

高橋 勝美「青森の朝市」

やはり青森といえばりんごでしょうか。

りんごだけの店が一番立派なのは面白いです。

 

高橋 勝美「御成座」

電球をつけたり、屋根を外して中を見れるようにしたり、見せ方にも色々工夫が見られます。

高橋 勝美「御成座」

劇場の2階は住み込み部屋になっているようです。

 

高橋 勝美「職業『バス修理士』」

どの作品も仕事という要素が入っています。もっともミニマルなのがこちらの作品。

高橋 勝美「職業『バス修理士』」

昼夜の食事に加えカップラーメンまでおいてあります。

過酷な仕事ぶりが伺えます。

 

 

4位.田中達也

田中さんは2018年日本橋高島屋で展覧会もやるなど、今かなり活躍されている作家さんです。

スケール別の分類もされており、今回の展覧会に最もふさわしいかも。

ミニチュアを作成し、写真に撮るというスタイルの作家さんです。

壁には写真作品が、中央のケースには元になったミニチュアが展示されており、比較できるようになっています。

田中達也「着火オーライ」

日用品を人間スケールの別のものに見立てるというのが基本スタイルです。

日用品が持つビビットなカラーをそのまま生かしています。

またタイトルも冴えたものが多いです。

田中達也「着火オーライ」

ミニチュア実物を見ると、ライターで見立てた列車の先頭部分は無改造で運転席になっているのが分かります。

また写真に入っているのは全体の一部だけなので、やはり実物が見れるのは嬉しいです。

田中達也「足がもうパンパン」

文房具がモチーフの作品が多いのですが、これは珍しく食品です。

食パンに過剰に詰められた野菜類が新鮮で美味しそう。

田中達也「これぞ”エンター”テイメント」

アイデアばかりに目が行きますが、簡略化された人物の表現にも注目です。

やはりこういうシーンには動物は欠かせない?

田中達也「これぞ”エンター”テイメント」

全体を見ると、ちゃんと一台のキーボードのみを使って制作されているのが分かります。

田中達也「永遠に溶けない雪だるま」

ドラマ性を感じる作品も。表現が非常に多様です。

 

 

3位.岩崎貴宏

岩崎 貴宏「リフレクション・モデル(サスケハナ)」

こちらも都内で個展をやる、人気作家さんです。

サスケハナとは蒸気船のことで、横須賀らしく黒船です。

上下対象の船はガンダムに出てくる宇宙戦艦みたいです。

同じミニチュアでも色んな表現があることがよく分かります。

 

岩崎 貴宏「フェノタイピック・モデリング・オン・ザ・フロア(広島)」

こちらも黒船同様ある意味侵略です。「資本主義の侵略」

非常に再現度が高いですが、看板は新聞などの広告の切り貼りだけで制作されています。

なので、正面と側面は完璧ですが、裏側はスカスカ。端には元になった広告も置かれています。

岩崎 貴宏「コンステレーション(横須賀)」

こちらは遠目には流行りの抽象画のようですが・・・

貼られている銀紙は実はチューインガムの銀紙。

また星座(=コンスレーション)に見えていたものはチェーン店のロゴです。

ロゴの位置は実際の横須賀市の地図と一致するそうです。

 

 

2位.鈴木康広

鈴木康広「日本列島のベンチ」

鈴木さんも見立ての作品が多いので、当然スケールに関する作品も非常に多いです。

もっとも毎回全く違う作品を発表するので全体像はつかみづらいです。

彼の作品自体も非常に小さい作品から今回のベンチのような非常に大きな作品まであります。

鈴木康広「水平線の消息ーひも」

また鈴木さんの作品はシンプルなしかけも特徴です。

こちらはひもをぐるぐる回すと立体に見える、という単純な錯覚をもとに、ひも状にスクリーンの映像を投射するという作品です。

左右のバーが伸び縮みすることによってひもの立体は形を変えます。

のどかな海の映像も相まって、ずっと見てられる作品です。

 

1位.高田安規子・政子

高田安規子・政子「Reaching the top of the ladder」

高田さんの作品は東京都現代美術館などでも見ているのですが、あまりにもスケールがあまりにも小さい仕事で正直面白さが分かりませんでした。

ただ今回は会場の特異性を生かした作品になっていたと思います。

タコ糸を編んだだけのはしごは横須賀美術館の天窓から降りてきています。

考えてみればこの横須賀美術館自体が色んなところに穴が開いていたり、建物の天井裏が見れたりかなりワンダーな空間体験です。

作品数は少なめですが、見ごたえがある展覧会でした。★★

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