今回は大阪府南河内の大阪府近つ飛鳥博物館に注目してみたいと思います。
設計は安藤忠雄氏。2017年には大規模な回顧展もありました。出身地である関西には安藤建築の秀作が集中してます。
最寄駅は大阪市内から電車で1時間弱の近鉄富田林駅。そこからさらにバスで20分ほど延々と坂を登って行き、降りてからも10分ほど森を散策と結構遠いです。
富田林駅からバスに乗ってる間、どこにいても見えるのが関西では有名なPL教(パーフェクトリバティー教団)のPLの塔(世界大平和の塔)。ここは宗教都市でもあるのです。
PL教もこの地に眠る太古の神々に惹きつけられたのかもしれません。博物館も100以上もある古墳の中に埋もれて建っています。
木々の間から見え隠れする建物は実際結構雰囲気があります。
なんといっても外観上の特徴は階段のみで構成されていることです。中央の塔のぺっぺんまで階段がありますが、ここは残念ながらバックヤードツアー時以外は登れません。
建築家には階段の設計が好きな人が多くいます。原広司の京都駅は明らかに階段が最大の見せ場ですし・・・
菊竹清則の西武大津ショッピングセンターのように不必要なまでに階段を強調したものもあります。
安藤さん自身も初期は狭小住宅の設計が多かったので階段が特徴の建物も多いです。「ギャラリー野田 」はほとんど階段と踊り場しかないような建物ですが、近つはこれを大規模化したものです。
駐車場と反対側、建物の裏側も細い階段があるという徹底ぶりですが、こちらも閉鎖中です。
展望台の上まで一気にエレベーターで来ることも可能です。地元の学校はここでコンサートをするそうです。
空から見ても、安藤建築の異端児であることがよく分かります。
館内に置かれた模型によってその構成はよく分かります。
階段状になっているだけに、平面図でその構成はよく分かります。来場者はこの1階から入場し、下に降りながら展示物を見ていきます。2階は学芸員用のスペースです。
地下一階にはメイン展示である仁徳天皇陵の1/150模型が中央にあります。
1階の展示室から地階の仁徳天皇陵の模型を見たところです。その上にはぐるっと変わり埴輪が展示されています。
展示品も変わったものが多く結構楽しめます。この埴輪をわざわざ河原を再現して展示したのは関西人のノリなのか?
この足だけ貼りついた埴輪はマグリットの絵みたいです。
1/150仁徳天皇陵は単なる古墳の模型ではなく、その周りに当時の暮らしの様々なシーンを再現している大変力の入ったものです。
大王の屋敷の再現です。広場では祭事を再現しています。
埴輪の制作風景です。当時からかなり職人は分業化していたと思われます。
古墳は建立の過程を段階に分けて再現していました。写真は完成時です。
最後に当時の古墳を作る技術が紹介されていました。埴輪の下に展示されているのが当時の木製の運搬具「修羅」です。ソリのようにして使ったそうです。
建物の外から見れるタワーは中が空洞になっています。展示の最後で見上げるとその底知れない闇を体験できます。安藤さんの建物は閉ざされた部分と開放的な部分がドラマチックに切り替わります。しかし近つは古墳の博物館なので、立地的にも理念的にも非常に閉ざされています。この博物館の展示は古事記に記された近つの血なまぐさい闘争劇から始まりますが、展示の最後もここに眠る王たちの埋葬を体験して終わります。
死がテーマであるために、建物には安藤さんらしからぬ部分が多々あります。しかしそのことでかえって歴史の追体験という理念に沿った博物館に仕上がっています。ナンコレ度★★★
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