大阪市吹田市の国立民族学博物館に行ってきました。
設計は黒川紀章氏。
場所は大阪の万博記念公園。この博物館は岡本太郎氏が万博のために集めた世界中の呪術グッズが大量に収められており、万博の最大の遺産です。
本作は日本初の建築思想、メタボリズムの実施建築の中でも最も理念にかなった建物です。
項目ごとに分けてそのポイントを押さえていきます。
外観の色合いは黒川さんのいうところの利休ねずみ。
要は灰色なのですが、日の当たり具合などによって様々に変化する中間色のことをいうそうです。
外観からは見当が付きませんが、実際中は4階建てなのでかなり巨大です。
ディテールがない巨大な建物は不快ですが、本作は利休ねずみのタイルを90度回転させたでっぱりを等間隔に配置することだけで、建物に表情を与えています。
送迎バスを利用すれば建物周囲を回ることができますが、後ろから見ても正面と同じデザインです。
いくらでも増築可能な設計が愚見化されています。
ちなみに博物館前の広場は現代美術の彫刻が多数置かれています。
注目は鉄板の巨大彫刻の巨匠の作品。
空に溶け込むイメージで制作したとのこと。
どちらから見ても同じような円弧が連続しているのが面白いです。
内部はカタカナのロの字が連続した構成になっています。
これは収蔵品の増加に伴って増築したさいデザインに矛盾が出ないよう考えられたものです。
これと同じ考えで設計されたのがクアラルンプール国際空港です。
またフロアの構成も1階が収蔵、2階が展示、3階が図書館、4階が研究室と完全に分離されています。これにより展示替えや研究のための資料の移動が最短の距離、時間で行えるという効果があります。
外観の利休ねずみに反して、2階エントランスは未来的なデザイン。
2階チケットカウンターの正面には中庭を囲んで円筒状のものが並んでいます。
中身はビデオコーナーです。
鑑賞者の人数に合わせて様々なデザインのものがあります。
黒川さんはこれをカプセルと呼んでいます。中銀カプセルタワービルに代表されるようにカプセルは黒川さんの建築において最重要キーワードの一つです。
カプセル上部の太いパイプはデザイン上の要請でしょうか?
カプセルが展示室より手前にあるのは「展示物を観なくても映像で同じ効果が得られる」という黒川さんの予測に基づくもの。展示室を観る時間がない人のためのショートカットを兼ねています。
もっとも映像や写真で大半が分かるからこそ生の体験が重視されるようになったため、この予想は外れたといえそうです。
とはいえ、映像資料の重要性に着目したという意味では重要な指摘でした。
このカプセルは半分に食い込んでいます。
この中庭は外壁は外観と共通ですが、床は雑草が生え放題だし、タイルのひび割れもおきています。
展示物(越前焼の大壺と深鉢)もいつみても同じ。
これは「未来の遺跡」というインスタレーションであり、博物館も一種の遺跡であるというメッセージが込められています。
内外で時間の流れが違うという発想のため、両者を跨ぐのはタイムカプセルのみです。
1階天井フタの不思議な模様。これは粟津潔のデザインしたもので、氏の指紋を元にしています。
粟津氏はメタボリズムに参加しただけあって、建築家とのコラボレーションが多いです。
外周のフェンスにも使われています。
古くなって歪んできてもバレない?
それに比べると博物館のマークは扉やエレベータに使われていますが、あまり目立ちません。
展示室内の黒に統一された展示物の取り付けパネルはここでしか見れないもの。シンプルながら非常にカッコイイです。
このパネル、よく見ると小さな正方形が集まって構成されています。
見上げるとむき出しの天井も黒一色で、やはり正方形の枠が付いています。
正方形といえば黒川さんのライバル、磯崎新氏の群馬県立近代美術館が有名ですが、建物自体も正方形でできている黒川さんの方が、徹底しており、合理的に感じます。★★★
展示物については量が膨大になるので、ページを分けます。
建築図鑑113★★★「国立民族学博物館」・展示編 – 博司のナンコレ美術体験2019年5月5日 7:04 AM /
[…] 国立民族学博物館は展示物が膨大のため、建物と展示はページを分けてみました。 […]