東京都新宿区の東京都庁を見てきました。
設計者は丹下健三氏。
丹下氏の作品の中でも賛否が分かれる建物です。まあこんな巨大な建物だとどうしても批判者は出てしまうものですが・・・
実際に建った作品より磯崎新氏の提案の方が評価されているぐらいです。
この辺りの経緯は上記の本に詳しいです。
丹下氏が当時の都知事の鈴木 俊一氏と親しく、しかも丸の内の旧都庁の設計も丹下氏とあって、出来レースだという話は当時からありました。
しかし磯崎案を除くと他の提案はシンボル性を外したフツーのツインタワーばかりだし、やはり丹下案で正解だったと思います。
巨大な建築ゆえにまずは足元から見ていきます。
この新宿副都心は汐留や丸の内とともに、東京では珍しいビルが整然と並んでいる地域。
動線計画は地下鉄駅以外にも新宿駅からでも地下の動く歩道で雨にぬれずに行き来可能と非常に優れています。
足元の議会棟と本庁の間は彫刻広場になっています。
もっともいつも閑散としており、寒々しい印象。丹下氏は「都民に親しんでもらえる広場」にしたとのことでしたが、この広場は正直「周囲を排除して都庁を眺める広場」以上の機能はない気がします。
低層部には35点のアート作品が設置されています。
国内外、絵画、彫刻、具象から抽象まで揃っており、ちょっとしたものです。
都庁建設の1%もの予算が使われているとか。
個人的にはこちらの作品が好きです。
外観はノートルダム大聖堂を模したと言われる双塔タイプ。
模様は対候性の強い花崗岩系の石を2色使い分けデザインされています。
パターンは日本の伝統的な家屋から取ったと言われていますが、内装も合わせると半導体などのハイテク機器から取ったのではないかと思われます。
モダン建築に反したデザインですが、丹下氏は都側のシンボル性のある建築をという要望に積極的に答えました。
頂部は45度角度をつけ軽やかさを演出するとともに、40ものアンテナを取り付けられたアルミサッシになっています。
これは都内各地の貯水池など観測所からデータを取得し、防災に役立てる役割があります。
データは8,9階に防災センター送られます。因みにすぐ下の7階が知事室となっており、非常時にはスムーズに指揮が取れます。
この再頂部はほとんどいつもなんらかのライトアップが行われています。
その巨大さは並みの中央省庁3つ分に相当する人員を要するせいです。
丸の内は分散してましたが、新都庁は第二庁舎と合わせて一か所にまとめました。もっともその利便性があったかは疑問ですが・・・
内部は第二庁舎とブリッジが繋がる5階に全エレベーターが停止し、メインの動線とする計画です。
低層階の内観は壁、天井に線上に照明が入り、未来的なデザインです。
この照明は人の流れを表していると言われていますが、外観とも合わせると電子機器の情報の流れを表すケーブルに見えてきます。
高層階は双塔とも展望台として無料で開放されています。
左右でカフェとレストランが棲み分けており、開放日もずらしているので基本いつでも見に行けるという親切ぶりです。
どちらもお土産屋がかなりの面積を占めてますが・・・
お土産以外にも各種イベントに活用されいるようです。
展望台の天井はスクリーンとして利用可能とのことでしたが、実際使われているのでしょうか?
かなり寂しいデザインです。
展望台からの眺め。
双塔なので反対側の塔が間近に見れます。
同じ丹下氏設計の新宿パークタワーが見えます。
新宿NSビルの小ささが際立ちます。
施工業者が都庁は高層ビル3棟分を作った気分だと言ったという話も頷けます。
色々批判もありますが、東京のシンボルとしての役割を果たし、無料の展望台も提供されて実際外国人を中心に人気を博しているので、費用分は回収できたのではないでしょうか?
その豪華さも日本の高度経済成長期の象徴として残していきたいです。★★
建築図鑑100★★★吹き抜けビルの王様「新宿NSビル」 – 博司のナンコレ美術体験2019年3月17日 7:20 AM /
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